Research Abstract |
ナノオーダーの磁性超微粒子を分散させた光透過性のある新規高分子系複合材料の創成を目的とした。当初,ポリメタクリル酸メチル(PMMA)中に,鉄ペンタカルボニル(Fe(CO)_5)を分散させた試料を作製し,Fe(CO)_5を飽和磁化の大きな窒化鉄に変換するために高温アンモニアガス処理を行った。その結果,一部は窒化鉄に変化したものの,黒茶色不透明であり,またマトリックスであるPMMAも発生気体により小さな気泡が多数生成した。この結果より,2つの問題点が明らかとなった。すなわち窒化鉄の光吸収が非常に大きいこと,マトリックスポリマーの耐熱性が大きくないことである。そこでマトリックスには耐熱性の高いアラミドポリマーを,また磁性粒子には高いファラデー効果が期待できる金属ニッケルおよびコバルトに切り換えた。アラミドポリマー中にコバルトやニッケルの錯体を分散させた厚み100μmフィルムを作製し,これらを水素雰囲気下250℃〜350℃の温度範囲で熱処理することにより,20〜100nm程度の粒子径の超微粒子が分散した光透過性のあるフィルムが得られた。また粒径は比較的良く揃っていた。磁性粒子サイズは,用いた錯体の種類に大きく依存し,例えば塩化ニッケルでは粒径が100nm程度の粒子が,また酢酸ニッケルや硝酸ニッケルの場合には20nmと小さな粒子が得られた。これらに試料は,マトリックスに対して15wt%程度まで磁性体を導入することができ,磁石に対しても非常に良く引きつけられた。また磁性体の粒子サイズは,単磁区構造の範囲にあり,超常磁性を示すほど小さくないため,生成した磁性粒子は最も大きな保磁力を有する微粒子である。以上,磁性の大きなニッケルやコバルトを分散させた光透過性のある高分子系複合材料を作製することができた。これらは,大きなファラデー効果を持つ材料として期待される。
|