Research Abstract |
分担者高橋が中心となり,分子(動)力学等に使用される原子間ポテンシャルの決定方法であるMEAM(Modified Embedded Atom Method)の表面問題への適応を検討した.具体的には,走査型トンネル電子顕微鏡や低速電子線回折などによって計測された固体表面原子の配列とMEAMによるポテンシャルから推定される配列を比較した.検討は,面心立方格子(FCC)構造,体心立方(BCC)構造,単純立方構造,およびダイアモンド構造を取る物質で,MEAMパラメーターが決められている全ての物質に対して行った.その結果,シリコン(111)表面における7×7構造をMEAMポテンシャルはかなり正確に表現することがわかった.また,FCC金属の(110)表面においては理想構造をとるものとMissing Row構造をとるものがあるが,MEAMポテンシャルは多くの系に対し,実験と同じ構造を予言することが判明した.量子化学計算でない方法が表面の原子間結合状に対しこれほど有効であると言うのは驚くべき結果と言える.但し,物質によっては実験値と相反する結果となるものもあり,MEAMの適用は慎重でなければならない一面も明らかになった.同時に,実験における境界条件が真に正しいとも限らない点も考慮する必要がある.しかし,おおむねMEAMは多原子系のポテンシャルとして期待できるという結論をえた.実験的な検討については,従来のシステムを改造することにより,より信頼できるシステムにする事ができたが,結果に関しては今後も検討を続ける予定である.
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