Research Abstract |
本研究では,電気探査データによる地下比抵抗推定逆問題に関して,遺伝的アルゴリズムを利用した大域的解探索法の構築を行ない,従来のFEMをベースとする線形化反復法ではその収束解に偽像の発生する地下構造モデルをとりあげて,シミュレーションを中心に検討を行なった。その結果,従来法における偽像は,初期推定解に大きく依存するものであり,遺伝的アルゴリズムでは,それらの偽解も真の解とともに,探索過程において解集団の中に発生し,データから推定される最適解の候補として残留するものであることが,例として確認された。しかしながら,遺伝的アルゴリズムでは,地下の比抵抗分布を有限長の遺伝子コードとして表現することが必要であるので,地下構造も比抵抗値も比較的簡単で離散的なものに限るしかなく,その意味で,現段階では,解探索の範囲が空間としては広いものの,密度的には必ずしも十分であったとはいえず,確認された偽の解が唯一のものであるか,あるいは探索空間の中に多数存在するものであるかなど,大域的な解空間の構造まで議論するには至らなかった。さらに,逆問題においては,最適性の評価基準が解空間の構造を大きく左右するものであって,初期推定解を必要としない遺伝的アルゴリズムのような大域最適化法においては,その解探索プロセス以上にその基準の適切な設定が重要となってくることが示され,その意味で,ファジー理論の導入など,地質学的先験情報をその評価基準に取り込む方法の検討がとくに重要であることが示された。 研究期間内には,実際の観測データを用いた解析などを含め,十分な検討がなされたとは言い難い。しかし,本研究で提示した,遺伝的アルゴリズムを利用した大域最適解探索と地質情報の融合法は物理探査逆問題全体においても大きな可能性をもっているものであり,今後もさらに検討を進めてゆきたいと考えている。
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