Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2000: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1999: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1998: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
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Research Abstract |
様々な環境に生息している軟体動物のタンパク質架橋酵素である組織型トランスグルタミナーゼ(TGase)の酵素学的特徴を比較したところ,酵素の活性化が環境の塩濃度の影響を受けることを見いだした。特に軟体類(二枚貝)筋肉のTGaseは海産のものは全て海水すなわちそれと等張の体液中のNaClおよびCa2+濃度で活性化されたが,淡水産の二枚貝ではNaClで活性化されないか,むしろ阻害された。汽水に生息するヤマトシジミ,琵琶湖のセタシジミの斧足筋TGaseは活性染色で少なくとも複数のアイソザイムのバンドが検出され,イオン交換クロマトグラフィーで分離できた。これらはNaClで活性化されるものと阻害される両タイプの酵素であった。これらの結果から,TGaseの活性化は外界の環境と接触するとき,すなわち創傷時に起きると推測した。 二枚貝の体液(血リンパ液)は創傷時にも凝固しないので,創傷箇所への血球シートの貼付で止血される。体液の血漿中にはTGaseは存在していないことがわかった。一方,血球にはTGaseが存在しており,血球タンパク質に作用することが明らかになった。この結果は血球中のTGaseは血球シートの形成時に架橋し,シートを補強することが推定された。また,筋肉の酵素は体液または環境水に接触すると同時に活性化されるが,活性型酵素は失活しやすいことから,本酵素は創傷箇所で急激に活性化され,創傷箇所のタンパク質を架橋重合させ,直ちに失活する。失活が速やかに起きるのは体液に運ばれ,不必要な場所で作用しないための機能であると考えられる。
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