Research Abstract |
内皮型一酸化窒素合成酵素遺伝子欠損,性差の血管内膜肥厚への影響:マウス内膜肥厚モデルを用いての検討 動脈硬化は遺伝因子と環境因子によって複雑に形成されてくると考えられるが、この因子を分析するために我々は1.再現性のあるマウス血管内膜肥厚モデルを作製した。次に2.血管内膜肥厚に大きな役割を果たしていると考えられる一酸化窒素合成酵素遺伝子(eNOS)の欠如したマウスにこのモデルを適応し、eNOSの血管内膜肥厚に与える影響を検討した。【方法】血管内膜肥厚はポリエチレンチューブのカフ(内径0.56mm,長さ2mm)を左の大腿動脈の外側に巻くことによって作成した。8週齢の雄と雌の野生型(SV129とC57BL/6)及びeNOS欠損のマウスを用いた。カフ留置2週間後に左右大腿動脈を灌流固定摘出し、カフで巻かれた血管及び同部位の対側のカフなしのコントロール血管(長さ2mm)からの各々10輪状切片より血管内腔、内膜及び中膜平滑筋の容積より内膜肥厚(μm)及び内膜中膜容積比(I/M)を計算した。【結果】カフなしのコントロール血管にては野生型及びeNOS欠損マウス共に血管内膜肥厚は認められなかった。カフ側の血管ではI/M及び内膜肥厚はそれぞれeNOS欠損雄マウスで70%,20μm,野生型雄マウスで28%,7.3μmと有意にeNOS欠損雄マウスにおいて血管内膜が肥厚していた(P<0.001)。ヘテロのeNOS異常雄マウスではI/M及び内膜肥厚は43%及び11μmであり、野生型とホモのeNOS遺伝子欠損マウスの中間であった。雌の野生型マウスは雄よりも内膜肥厚は少なく、これはeNOS欠損マウスでも同様であった。【総括】1.カフモデルによってマウスの血管内膜肥厚を定量化可能であり、血管内膜肥厚は雌の方が雄よりも少ない。2.eNOSの欠如は血管内膜肥厚の増悪因子の1つである。
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