Project/Area Number |
10F00331
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 外国 |
Research Field |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 隆 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ANG Ran 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2010 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2012: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 2011: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2010: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
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Keywords | 光電子分光 / 遷移金属化合物 / 新機能物質 / 高温超伝導 / 鉄系超伝導体 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、鉄系高温超伝導体の高分解能角度分解光電子分光実験を行った。昨年度の研究によりKFeAgTe_2の電子構造は占有側で0.5eVのギャップを持つ絶縁体であると結論した。LDA計算ではFe3dによる磁気秩序構造によらずに金属的な電子構造を予見していることから、KFeAgTe_2はバンド絶縁体ではないことが分かった。これは、大多数の鉄系高温超伝導体よりも、むしろ銅酸化物高温超伝導体の母物質に近い電子状態であることから、KFeAgTe_2の絶縁化機構は、高温超伝導の本質的な理解を進める可能性がある。この点をあきらかにするため、放射光施設において高分解能角度分解光電子分光事件実験を行い、励起光依存性からKFeAgTe_2や類似物質の電子構造の3次元性を決定し、絶縁体領域の電子構造の精密な決定を行った。現在、投稿した論文の査読結果に対して論文を修正中である。 鉄系超伝導体と並行して、一つの物質でCDWと超伝導を示す3d層状遷移金属化合物MドープTaS_2(M=Ni,Fe)の高分解能角度分解光電子分光実験を行った。この物質の電子構造の詳しいドープ量依存性を調べるため、M=Feの試料について10種類以上のドープ量を変化させた大型単結晶を育成して、バンド構造とフェルミ面を決定した。その結果、非整合CDW相において明確な電子ポケットを観測し、詳しい温度変化から、この電子ポケットはCDW状態のバンドの折り返しで説明出来る事を見出した。この電子ポケットは超伝導相における唯一のブェルミ面であり、ドープ量を変えて非整合CDW周期を消失させると、フェルミ準位上の電子状態密度も同時に消失してMottもしくはAnderson絶縁体への転移することを見出した。この事から、Fe_xTaS_2における超伝導は、非整合CDW秩序と共存していると結論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電子相関に起因した様々な新機能物性を示す遷移金属化合物KFeAgTe_2および1T-TaS_2について、光電子分光を用いて超伝導、CDW、金属絶縁体転移に関する様々な知見を得る事ができた。精密なドープ量制御により多様な電子相と電子構造の関係を見出すことに成功したが、これはAng氏の注意深い試料育成技術に依るところが大きい。 とりわけ1T-TaS_2についてはCDW秩序と超伝導は競合により空間的に分離して発現するという従来の考えに対して、詳しい電子状態の研究から空間的な分離は存在せず両者は共存したものである事を見出したのは、超伝導機構を考える上でも重要な知見であると考えられる。この主張が受け入れられ、物理分野の最大の権威誌であるPhysical Review Letters誌で論文を発表することができた。以上の事から、本研究は概ね順調に進展したと結論する。
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