Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2012: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2011: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2010: ¥600,000 (Direct Cost: ¥600,000)
|
Research Abstract |
本研究は,窒化物半導体AlGaN系の量子井戸構造により,波長350nm以下の紫外光源を得ようとするものである.この波長域の光は,LSIプロセス,キュアリング,表面改質,殺菌・消毒など,われわれの生活を支える幅広い分野で既に必要不可欠な光である.従来,水銀ランプやフッ素・塩素系のエキシマランプなどが用いられてきたが,低い発光効率,高い環境負荷の構成元素,短い寿命などが問題とされている.したがって,深紫外領域で,高効率,長寿命,低環境負荷の光源を半導体で実現することができれば,エネルギー問題や環境問題の解決に向けて大きく貢献しうるものと考えている.このAlGaN量子井戸構造に関して,本年度は以下の成果を得た. (1)高品質なAlN基板の入手が困難であることから,サファイア(0001)基板上へのヘテロエピタキシーを行った.サファイア基板の表面に現れる分子層ステップの位置に,貫通刃状転位列が形成されることが透過電子顕微鏡観察により明らかになった.その原因が,サファイア(0001)面の原子配列にあると予測し,偶数分子ステップを導入することにより転位列が消滅できることを予測した.それを実験的に証明するためにサファイア基板のオフ角の選定,熱処理条件の最適化を図り,その上に成長したAINにおいて実際に転位列が消滅していることを示した. (2)サファイア基板の窒化による高品質化を試みた.窒化により3ミクロン程度の厚膜でもクラックの発生が抑制出来ることがわかり,その波及効果として厚膜化により転位密度が低減することが実験的に示された.その原因として,窒化されたサファイア上ではAlNが初期成長過程において三次元成長するため,三次元成長核が合体するときに空孔が発生し,それがクラックを引き起こす歪吸収部として機能することを見出した. (3)Siをn型不純物として添加し,電気的および光学的特性を評価した.電気的には,Si添加に伴い抵抗が減少することが確認できた.光学的には,Si添加に伴う歪の変化が発光ピーク位置の変化として観察された.イオン半径が異なる材料の導入に伴う変化であると考えられ,電気特性とも合わせ,Siがドーピングされたことを示している.不純物添加による点欠陥(非輻射再結合中心)の抑制効果はクリアには観察されなかった. (4)転位密度と発光特性の関連を評価するために,さまざまな転位密度のサンプルを準備し,そのフォトルミネッセンス強度を比較した.その結果,転位密度が10^8/cm^2以下であれば,発光強度に大きな影響はないことが分かった.上記,窒化サファイア基板は有力な手法であることが確認された. (5)AlGaN量子井戸におけるポテンシャル揺らぎを評価した.揺らぎの最小において局在したキャリアが高効率発光に寄与することを実験的に示した.
|