Project/Area Number |
10F00706
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 外国 |
Research Field |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(理論)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 則雄 京都大学, 大学院・理学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
PETERS Robert 京都大学, 大学院・理学研究科, 外国人特別研究員
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Project Period (FY) |
2010 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥1,500,000 (Direct Cost: ¥1,500,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Keywords | モット転移 / 強相関電子系 / 量子相転移 / 磁性 / 軌道自由度 |
Research Abstract |
本研究では、遷移金属酸化物を中心とした強相関電子系に関して、多軌道の効果に重点を置きモット転移近傍における量子凝縮相の理論的研究を行った。特に、モット転移や磁気転移などの量子相転移点近傍で増幅されたスピン・軌道揺らぎに起因する量子現象に重点をおいた。 昨年度に引き続き、多軌道のハバードモデルを利用して、遷移金属酸化物で観測されている種々の量子凝縮相の起源を理論的に明らかにした。数値計算の方法としては、動的平均場近似、数値繰り込み群、密度行列繰りこみ群を用いた。中でも、軌道間のフント結合と外部磁場が系の物性に与える効果に関しては、いくつかの重要な知見が得られた。今回の計算では、電子密度が1/4フィリングとなる場合を中心に取り扱った。この場合、系は強磁性秩序と軌道秩序の2種類の長距離秩序をもつ。この2つの量子相の競合・協力により豊富な相が実現することが分かった。特に、強磁性と軌道秩序の共存相への相転移点近傍では、大きな磁気抵抗効果が現れることを明らかにした。このような低温での量子相転移に加えて、高温相ではフント結合の変化に伴って非磁性絶縁相と非磁性金属相の間のクロスオーバーが起きることを明らかにした。 希土類化合物の重い電子系を記述する近藤格子模型も2軌道強相関電子系の典型例である。動的平均場理論を用いて、この模型の絶対零度の強磁性について詳細な解析を行った。その結果、強磁性を安定化する新たなメカニズムとして「スピン選択型近藤絶縁体」という概念を提案した。これは,マジョリティスピンは金属であるがマイノリティスピンは近藤ギャップを持つ絶縁体であり、強磁性と近藤効果の協力によって初めて生じるものである。特に、動的に誘起された「整合条件」がこれを引き起こすカギとなっていることを明らかにした。さらに、この概念は電子磁化、局在スピン偏極、電子フィリングなどの巨視的な物理量の間に非自明な関係があることを予言する。この結論は動的平均場を用いた3次元系に対する計算で得られたが、密度行列繰りこみ群を用いることで、以上の結論が1次元電子系でも成立することを確認した。これらの結果は、スピン選択近藤効果が系の次元に関係しない極めて一般的でユビキタスな現象であるということを示している。
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