宇宙の大規模構造を用いた暗黒エネルギー及びインフレーションの研究
Project/Area Number |
10J00181
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Astronomy
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西道 啓博 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2010 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2012: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2011: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2010: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 宇宙の大規模構造 / 加速膨張の起源 / 銀河バイアス / 原始非ガウス性 / 暗黒エネルギー / インフレーション / 数値シミュレーション |
Research Abstract |
膨大な銀河によって描き出される宇宙の大規模構造を用いた宇宙論研究において、最大の不定性は物質全体の分布を銀河がどのようにトレースしているかという問題であり、これを「銀河バイアス」と呼ぶ。本年度の研究は、(1)銀河バイアスをより深く理解し、信頼性の高い理論模型を構築すること、(2)これまで不定性として捉えられてきた銀河バイアスの存在が、却って新しい知見を引き出す窓となる可能性、の2つのテーマに沿って行った。 (1)では、宇宙の超大構造から銀河サイズまでを正確に描き出す宇宙論的N体シミュレーションから同定した「サブハロー」のクラスタリング解析を行った。特に、サブハローの「環境」の違いが速度構造に与える影響に注目し、速度場を利用した修正重力理論と暗黒エネルギー模型とを見分けるテストに混入し得る系統誤差について調査した。この結果、サブハローがハローの中心にあるか否かという比較的小スケールにおける「環境」の差異が、見かけ上の速度構造を大きく変えることを示すとともに、実際に観測された銀河の速度構造からその銀河の性質について重要な知見を引き出す方法論を提案した。 (2)では、銀河バイアスに現れる宇宙の原始非ガウス性の影響を系統的に調べ上げることで、宇宙の種揺らぎを作ったとされるインフレーションの機構について新しい重要なテストができる可能性を明らかにした。揺らぎの起源となる原始の場が単一成分なのか複数成分かという違いが近傍宇宙の銀河の空間分布に異なる痕跡を残すため、これを手がかりに模型に依らないロバストなテストが可能であることを示した。また、異なる赤方偏移における複数の観測結果を組み合わせることで、従来調査されて来た2次結合に由来する非ガウス性と、より高次の結合に由来するものとを見極められることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度行った2つの研究は、当初はシミュレーションの中で閉じた理論研究を予定していた。しかし、シミュレーションの解像度の向上、高精度の解析的模型の構築において大きな進展があったため、実際に観測された銀河の空間分布と直接照らし合わせることで、新たな知見を引き出す段階まで進展した。初めの研究では観測された銀河が、背景にある暗黒物質ハローの中央付近に存在する「中心銀河」とその周りを漂う「衛星銀河」とどのように対応しているかを決定する方法論が完成した。一方で、2つ目の研究では、観測量のみから構築可能な、原始揺らぎの性質と直接結びつく新たな指標を提案するとともに、その有効性をシミュレーションを用いて実証できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は主に研究(1)の追試として、銀河を特徴付ける小スケールの情報と重力理論の性質を決定する大スケールの情報を切り分ける方法論の構築を目指して解析を続けたい。より具体的には、性質が全く未知の銀河の分布が与えられた場合に、銀河の環境を記述するパラメタと重力理論を記述するパラメタを同時に動かして最適解を求められるか、という問題設定で、当面はシミュレーションをベースとして研究を進めたい。また、銀河のバイアスをより適切に記述することが可能な解析的模型の構築も同時に進めたい。これは、昨年度取り組んだ「繰り込み摂動論」の構造に則って、銀河の性質を以下に取り込むかということになるが、より実用的なパラメトリゼーションの模索や、宇宙論パラメタとの縮退を異なる統計量の組み合わせからどのように解いていくかということが実際的な課題となる。
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Report
(3 results)
Research Products
(24 results)