Research Project
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
当該年度は、浅海サイト(和歌山県白浜町水深2m)と深海サイト(南西諸島海溝水深500m)において研究を進めた。浅海サイトでは、4年間に及ぶ木片の設置&回収実験を終え、木片の海洋流入から消失までの被食プロセスを明らかにした。そのプロセスを追うと、まず内湾環境では、生物群による分散能力の違いに関係なく直ちにフナクイムシ科、ニオガイ科、キクイムシ科の加入が起きた。海洋流入後間もない木片では、フナクイムシ科が急速な被食を担った。しかし、フナクイムシ科が海洋流入から消失まで繰り返し高密度で加入するわけでは無く、初期にしか優占しなかった。設置期間が長くなると、フナクイムシ科に代わりキクイムシ科が優占した。他の穿孔と交差して木片を破砕する性質を持つキクイムシ科は、基質表層の崩壊と、それに伴い露出する下層の被食を繰り返した。これによって、既に内部をフナクイムシ科によって高い割合で被食されていた木片は急速に崩壊した。以上のプロセスを、各種の詳細な個体数データをもとに示した。一方で、深海サイトでは、設置期間が8、21、30ヶ月後のサンプルを元に、水深500mにおける木片の破砕プロセスについて研究を進めた。結果、大型のキクイガイ科が棲息する水深では、低水温等に関係なく急速に木片内部の侵蝕が進むことが明らかになった。但し、特定の生物種が海洋流入から消失まですべてを担うわけでは無く、多様化したキクイガイ科の中で優占種が遷移することが明らかになった。深海では、他の穿孔と交わらない性質を持つキクイガイ科が更なる穿孔を担うために木片の強度低下が起こり難く、海底により長く維持されることが明らかになった。
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Open Journal of Marine Science
Volume: 2 Issue: 04 Pages: 177-187
10.4236/ojms.2012.24021
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