Project/Area Number |
10J03443
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石田 茂之 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2010 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 鉄系高温超伝導体 / 結晶合成 / 輸送現象 |
Research Abstract |
鉄系高温超伝導体の母物質は磁気・構造相転移を起こす。元素置換(ドーピング)などによりこの相転移を抑制すると超伝導が発現する。ゆえに母物質の電子状態、超伝導相との関係を調べることは、超伝導発現機構を解明するうえで重要である。 この秩序状態では結晶が斜方晶となり長軸(a軸)と短軸(b軸)があり、スピンはa軸方向に反強磁性的に、b軸方向に強磁性的に配列する。従って秩序相の電子状態は本質的に異方的である。 代表的な鉄系高温超伝導体であるBa(Fe_<1-x>Co_x)_2As_2の良質単結晶を用いて、a、b軸各方向の面内電気抵抗率を測定した。母物質(x=0)では異方性が小さいことが明らかになった。また磁場中輸送現象測定から、磁気・構造相転移に伴うフェルミ面の再構成の後に残った電子と正孔が高い移動度を持ち、電気伝導に寄与することにより異方性が隠されていることを明らかにした。このことは、光学スペクトルにおいてa軸とb軸の両方で低エネルギー領域のドルーデ成分が支配的になっていることとも一致する。異方性は高エネルギー領域において顕著であることが明らかになった。 FeをCoで置換すると異方性が顕著になる(x=0.02,0.04)。特にx=0.04までは、異方性の大きさと残留抵抗率の大きさがともにCoの量におおよそ比例している。よって置換されたCoが異方的な散乱体となっていると考えられる。不純物散乱を媒介して、隠されていた異方性があらわになったといえる。光学スペクトル測定の結果からも、ドルーデ成分の異方性はキャリアの散乱時間に起因することが明らかになり、輸送現象の結果と対応している。 さらに置換量を増やすと(x≧0.05)超伝導が現れ、異方性は消失し、残留抵抗率も減少する。最適置換量(x=0.08)では異方性は観測されない。磁気・構造秩序相と超伝導相は競合しており、本質的に電子状態が異なることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的・計画に基づき、主にBaFe_2As_2系物質について、さまざまなドーピング量について良質な単結晶を合成し、精密な輸送現象測定を行うことができた。結晶の大型化に成功したものについては、光学応答測定も行った。得られた結果から、鉄系高温超伝導体の磁気・構造秩序相の電子状態に関する重要な情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
鉄系高温超伝導体の中でも最も高い超伝導臨界温度を持つLnFeAsO(Ln:ランタノイド元素)については輸送現象測定が可能な大きさの単結晶を得ることはできたが、光学応答測定など他の実験を行うにはまだ十分な大きさではない。高圧法による結晶合成について、合成条件の最適化を進めることに加え、金属封管法を用いた結晶合成も検討する。
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