両親媒性有機分子を触媒的に用いる効率的水中有機反応の開発
Project/Area Number |
10J04974
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Synthetic chemistry
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 圭佑 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2010 – 2011
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2011)
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Budget Amount *help |
¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 有機分子触媒 / 水素結合 / 多点認識 / 二官能性 / アミノチオウレア / 分子内ヘテロマイケル付加 / 複素環 / 不斉合成 / 長鎖アルキル基 / 両親楳性 / 立体効果 / 柔軟性 / 水 / 反応場 / 配位子 |
Research Abstract |
昨年度、アミン触媒による水中反応の検討を行う中できっかけを見いだした二官能性アミノチオウレア触媒による分子内ヘテロマイケル付加反応を利用した不斉複素環合成法に関して今年度さらに検討を進めた。 ヘテロ原子によるα,β-不飽和カルボニル化合物へのマイケル付加反応は有用な炭素-ヘテロ原子結合形成反応であり、これを分子内反応として行えば簡便にキラルな複素環化合物を合成することができる。しかしその不斉反応は、適切な不斉環境の構築が困難なことや分子内過程が迅速であることなどから容易ではなく、特に触媒的に行うことは難しい。今回、この課題に対して同一分子内にアミノ基とチオウレア基を持つ二官能性有機分子触媒を用いることが有効であることを見いだした。二官能性触媒による多点での認識は環化過程における不斉誘導に効果的であり、また両触媒活性点でともに穏和な性質の水素結合を活用したことにより迅速な分子内反応においてもその多点認識を維持しやすかったものと思われる。 検討の結果、シンコナアルカロイドから誘導した二官能性アミノチオウレア触媒を用い、ε位またはδ位に求核性ヘテロ原子を有する様々なα,β-不飽和カルボニル化合物から分子内ヘテロマイケル付加反応を行うと、高エナンチオ選択的に反応が進行し、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、スピロアセタール、インドリン、オキサゾリジン、オキサゾリジノンといった含酸素及び含窒素複素環化合物の触媒的不斉合成が行えることを見いだした。これらは天然物や生理活性物質をはじめ様々な化合物に見られる重要な部分骨格であり、本手法が合成化学分野にもたらす貢献度は大きい。また、本手法は単純な分子内環化のみではなく形或的環化付加反応にも展開できるなど強力なものであり、今後さらなる発展が期待できる点でも意義深い。さらに、複素環合成のみではなく、生成物の変換により幅広い光学活性化合物の合成にも繋がることを示しており、不斉合成法としての有用性は大変高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定からは多少方針転換した内容の研究に展開しているが、これは申請書に記載した計画に基づいて研究を遂行する過程で見いだした発見に着目し、より重要度の高いテーマ設定を行えたことによるものである。 これにより当初予定していたものとは異なるが、新たな不斉有機分子触媒反応の形式を確立し、これを利用した新規反応を既に複数見つけ一流学術誌に報告している。これらの結果はこの分野に対して新たな概念を提供するもので、世界的にも高い評価を受けており、同内容に関する学会発表においては受賞も複数頂いている。これらの状況から本研究は当初の計画以上に大きく進展したと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
水素結合を活用した二官能性有機分子触媒により分子内不斉ヘテロマイケル付加反応を行うという現在までに見いだした手法は一般的かつ強力なものであり、未だかなり展開の余地を残していると考えている。この反応形式が適用できるのはε位またはδ位に求核性ヘテロ原子を有するマイケル受容体構造を持った基質または中間体であるが、これらの種類や発生法を変化させることにより構築できる複素環骨格の種類はさらに拡張できる。また、本反応を利用してキラルな複素環骨格を含む生理活性物質や医薬品の不斉全合成研究や、不斉補助基や不斉配位子などの新規反応剤開発の研究などへと展開することも可能である。さらに、現時点では立体選択性が不十分ないものに関しては、既存の触媒で検討を行うだけではなく、新規の有機分子触媒開発まで視野に入れて取り組むことが必要と考えられる。
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Report
(2 results)
Research Products
(22 results)