Project/Area Number |
10J06331
|
Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Risk sciences of radiation/Chemicals
|
Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
江口 哲史 愛媛大学, 大学院・理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2010 – 2012
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
|
Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2012: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
|
Keywords | PCBs / PBDEs / 代謝物 / 天然起源物質 / 電子電気機器廃棄物 / アジア途上国 / 甲状腺ホルモン / 内分泌かく乱 / OH-PCBs / e-waste / 残留性有機汚染物質(POPs) / 臭素系難燃剤(BFRs) / 電子電気機器廃棄物(E-waste) / 水酸化代謝物 / ガスクロマトグラフ質量分析計 |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続き、ベトナムの電子電気機器廃棄物(e-waste)リサイクル地域住民血清中の、ポリ塩素化ビフェニル(PCBs),ポリ臭化ジフェニルエーテル(PBDEs)および、それらの代謝物の分析を完了させ、甲状腺ホルモンとの関係を解析することでヒトへのリスクを推察した。結果の一部を国内会議、第21回環境化学討論会で口頭発表し、優秀学生賞が授与された。e-waste処理作業従事者から検出された血清中PCBs濃度(pg g^<-1>wet wt)の中央値は600pg g^<-1>(♂:650pg g^<-1>、♀:500pg g^<-1>)、対照地域住民の中央値は260pg g^<-1>(♂:500pg g^<-1>、♀:210pg g^<-1>)であり、e-waste処理作業従事者における女性血清中のPCBs濃度は、対照地域の女性よりも有意に高値を示した(ρ<0.05)(Fig.1)。また、対照地域の男女間で有意な濃度差が認められたことから(ρ<0.05)、母子間移行によるPCBs濃度が低下が示唆された。一方、血清中水酸化PCBs(OH-PCBs)濃度はe-waste処理作業従事者(中央値160pg g^<-1>、♂:170pg g^<-1>、♀:140pg g^<-1>)で対照地住民(中央値75pg g^<-1>、♂:88pg g^<-1>、♀:71pg g^<-1>)よりも有意に高値を示した(ρ<0.05)。本研究で得られたこれらの値は、先進国住民に比べ低濃度であった。しかし甲状腺ホルモン濃度とPCBs,OH-PCBs濃度の関係を一般化線形モデルにより解析したところ、女性においてPCBs,OH-PCBs濃度と総T4濃度、TSH濃度との間に相関関係が認められた(ρ<0.05)。曝露実験などを試みたこれまでの報告の多くは、PCBsおよびOH-PCBsとTH濃度の間に負の相関関係を認めている。本研究で検出されたPCBsおよびOH-PCBs濃度は、これらの曝露実験や負の相関が観察された研究事例に比べて低濃度を示した。したがって、本研究の対象者は、PCBsやOH-PCBsの低濃度曝露によるTHの抑制よりも、生体側のポジティブフィードバックが強く観察されたと考えられる。一方でPCBsやOH-PCBs曝露に伴って、THレベルのアップレギュレートを誘引する未知の因子の存在が示唆されることから、今後さらに調査・解析を進める必要がある。この研究結果は今年度中に国際誌への投稿を予定している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画にあげていた化学分析およびバイオマーカー測定をすべて年度内に終えることができた。これらの解析についても順調に進んでおり、PCB代謝物が甲状腺ホルモン恒常性をかく乱する可能性を示唆できた。学術誌への投稿と学会発表も順当に行えたことから、初年度の目的はほぼ達成できたと自己評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究成果により、アジア途上国住民の汚染実態および甲状腺ホルモン恒常性のかく乱が示唆されているが、その因果関係やかく乱のメカニズムは未解明である。申請者は今年度から国立環境研究所においてJSPS特別研究員PDとして研究をつづけ、同一検体から採取した尿サンプルのメタボローム解析を行うことで、重金属・残留性有機汚染物質およびそれら代謝物が引き起こす毒性発現のメカニズム解明・リスク評価を試みる予定である。
|