Project/Area Number |
10J07647
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理(理論)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
門内 晶彦 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2010 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2012: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 原子核理論 / クォークグルーオンプラズマ / 相対論的流体力学 / 重イオン衝突反応 / ハドロン / 素粒子物性 / 非平衡統計物理 / 散逸流体 / 粘性流体 / 原子理論 |
Research Abstract |
陽子や中性子を構成するクォークやグルーオンは、量子色力学(QCD)によって記述される強い相互作用を行う。高エネルギー原子核衝突においては、QCD系は相転移を起こし核子からクォークが解放されたクォークグルーオンプラズマ(QGP)とよばれる多体系が生成されると考えられている。このQGPの時空発展を記述する非常に有力な手法が、相対論的な流体力学に基づいたモデルである。実験データを正しく記述するためには、粘性の影響を正しく評価する必要があることが知られている。相対論的な系における粘性散逸過程には多くの非自明性があり、本研究においては散逸流体モデルを構築することによってQGPの性質に迫ることを目的としている。当該年度においては、まず有限密度における散逸流体モデルによってずれ粘性、体積粘性およびバリオン拡散を考慮してその性質を調べた。特に正味バリオン成分に注目し、そこから輸送係数についての重要な情報が得られること、およびQGP生成にこれまで考えられていたよりも多くのエネルギーが使われている事を突き止めた。ここで正味バリオンは衝突軸に垂直方向のジオメトリーに依存しないことがこれまでの実験結果によって示されているため、横方向の膨張がない近似を考えている。横方向の流速まで加味した3+1次元散逸流体モデルについても既に理論的/数値的枠組みの構築に成功しており、近日中にさらに定量性の高い評価を行う見込みである。加えて、相対論的な流体力学そのものの発展として、因果律を保つために緩和効果をもたせた流体力学の安定性解析や、熱力学安定性との関連性の検討も進行しており、より強固な理論的背景をもつ枠組みが構築できている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
有限密度系における散逸流体の一般的な取り扱い手法を確立したとともに、輸送係数や初期条件に対する新たな制限を与えることに成功した。最新の大型ハドロン衝突型加速器における実験結果の解析も行っている。また横方向の流速について正しく取り入れるための理論的および数値的手法を構築することができた。さらに安定性の議論に基づいた相対論的散逸流体理論の評価が進むなど、当初の計画よりも大きな観点から研究を遂行できた。
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Strategy for Future Research Activity |
輸送係数や初期条件に対してより定量的な制限を与えるために、事象毎の揺らぎの入った初期条件や流体時空発展後のハドロン気体描像の解析を考慮することによって3+1次元の相対論的な散逸流体モデルを完成へと導く。また正味バリオン密度やその他の荷電にも注目し、有限密度において第一原理計算が困難であることを鑑みて、温度と化学ポテンシャルのQCD相図上に存在するとされる臨界点探索のために現在進行/計画中の実験(RHIC,FAIR,NICAおよびJ-PARC)における理論解析に応用する事が考えられる。これらの実験は中低エネルギー領域であるため、本研究において培ってきた粘性散逸過程の評価による局所熱平衡からのずれの検証が必要と期待される。
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