赤外レーザー分光と量子化学計算による生体分子高次クラスターの微細構造決定
Project/Area Number |
10J08000
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
Physical chemistry
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
浅見 祐也 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2010 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2012: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2011: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 2010: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
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Keywords | 核酸塩基 / 孤立気相分光 / 赤外振動スペクトル / 量子化学計算 / 尿酸 / アデノシン / 非調和振動計算 / 微細構造 / 水和 / 電子スペクトル / ヌクレオチド / 高次クラスター |
Research Abstract |
生命が多様な進化の中から作り上げてきたDNAやRNAは遺伝情報として利用されるたけでなく、生体内の生理作用や情報伝達といった重要な役割を担っている。このような生体分子は従来X線やNMRの測定によって構造の知見を得ることが可能だが、これらの手法では周囲に存在する分子の影響を受けるため、分子本来の性質を調べることは難しい。そこで我々は孤立気相状態の生体分子に対して、赤外レーザー分光法と量子化学計算を駆使してこの微細構造を明らかにしてきた。 昨年度の研究で核酸塩基の最終代謝物である尿酸、およびその水和物の構造決定に成功し、尿酸にみられる疎水性を構造化学の側面から解明した。そこで本年は、尿酸と特異的に相互作用することで知られる毒物メラミンを対象に、尿酸-メラミンクラスターの構造解析に着手した。TOF-massスペクトルの測定の結果、尿酸-メラミン1:1二量体が極めて安定に生成することを確認した。またこの赤外振動スペクトルの測定にも成功し、その結果よりこれまでX線で示唆されてきた構造とは異なる新たな構造が非常に安定であることを初めて明らかにした。 また本年は、昨年度に行った核酸塩基ヌクレオシドの一つアデノシンの二量体構造に関する研究をさらに深め、より高精度の非調和振動計算を行った。その結果、実験値をほぼ正確に再現することに成功し、アデノシン糖部にみられる水素結合による協同効果を定量的に評価することに成功した。以上の成果を国際学術誌Chemical Physicsに筆頭著者として発表し、高い評価を受けた。また国内の学会にて口頭講演を行い、日本化学会から学生講演賞を授与された。 さらに博士課程3年間の研究業績が極めて高く評価され、所属大学より博士(理学)の学位と学長賞が授与された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
計画していた尿酸-メラミン1:1二量体の構造決定は完結し、本年の分子科学討論会にて発表を行った。また近年、この二量体では極めて強い水素結合を形成していることが明らかとなった。この結果は近日中に論文に取りまとめ発表する予定である。 またこれとは別件で計画していたジヌクレオチドの非破壊的な気化においても、対象とする塩基をグアニンからウラシルへと変えることで大きな前進があった。これによって従来深刻であった脱プリン化の問題を克服し、分子量が約850のヌクレオチドを非破壊的に気化することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後ジヌクレオチドの気化が達成されれば、次の大きな目標としてはジヌクレオチドの二量体形成(ハイブリダイゼーション)を孤立気相状態で成功させることが挙げられる。しかしこの時、天然体同士の二量体形成を調べると同時に、天然体と人工核酸との塩基対形成がどのように形成され、どのような性質を持っているのかを詳細に明らかにすることは、創薬や医療分野への応用を考える上で大変重要である。 そこで、今後はこの人工核酸を自ら合成して、この分子の構造や性質を調べると同時に、天然体との相互作用を解析していく予定である。この研究は東京工業大学の藤井研究室また関根研究室のご協力を得て、特別研究員(SPD)のプロジェクトとして行っていく。また所属研究室では天然体のジヌクレオチドやトリヌクレオチドの非破壊的気化と赤外分光を目指して、分光手法の改良を進める予定である。
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Report
(3 results)
Research Products
(20 results)