Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2012: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2011: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2010: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Research Abstract |
1.イネのカドミウムの節管輸送の動態解析とOsLCT1の関与の検証 カドミウムの2つの節管輸送の経路(葉から子実への再転流と,根から吸収したカドミウムの節での維管束移行を介した子実への輸送)の寄与を野生型イネおよびOsLCT1のRNAi株およびT-DNA株を用いて解析した。安定同位体をトレーサーとして用いた実験より,出穂後に根から吸収されたカドミウムの玄米への輸送がRNAi株およびT-DNA株で有意に低下していることを示した。ポジトロン核種を用いたイメージング解析により,下位節から上位節への移行効率がRNAi株で低下していることが示された。ウンカを用いた篩管液中カドミウムの評価方法をさらに改良し,野生型株とRNAi株の穂首の篩管液中カドミウムを測定したところ,RNAi株で有意に低下していた。これらの結果より,OsLCT1は出穂期以降の根から吸収されたカドミウムの節間移行の一端に寄与しており,カドミウムの上位節(穂)への輸送を制御していることが示された。 2.OsLCT1の変異系統の解析 OsLCT1遺伝子に変異をもつ化学変異源処理された突然変異系統について,酵母での輸送活性試験と圃場での表現型解析を実施した。試験した変異株のうち,コーディングシークエンスの途中でストップコドンとなる変異株は,酵母でのカドミウム輸送活性が消失した。国内の圃場でイネ変異株を生育させたところ,関東の一般的な圃場条件下では変異による生長への影響は認められなかった。カドミウムの玄米中濃度は,いくつかの系統で野生型株より低下する傾向が認められた。 3.イネのカドミウム耐性関連遺伝子の解析 昨年度までに単離したカドミウム耐性に関わるQTLについてF3の解析を実施した。カドミウム耐性を付与する3つのQTLを含むF3系統では,3つのQTLに関して感受性型の遺伝型をもつF3系統と比べて,カドミウムストレス条件下で耐性を示した。耐性系統の元素分析を網羅的に実施したところ,感受性品種であるコシヒカリと比べてカドミウムおよび他の必須元素の蓄積に有意な違いは検出されなかった。また,OsPCS1の機能解析をドイツ・バイロイト大学との共同研究により実施した。OsPCS1の複数のバリアントおよびOsPCS2を単離し,酵母のpcs変異株に導入して解析したところ,各クローンによって長鎖のファイトケラチンの合成能が違うことが示された。また,イネのT-DNA挿入株を用いた解析により,カドミウム耐性への寄与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究課題の主要目標としていたカドミウムの篩管輸送のメカニズムと応用について,様々な解析万法によりカドミウムの維管束間移行実におけるOsLCTIの重要性を解明するとともに,OsLCTI遺伝子の変異株解析により,圃場レベルでの当該遺伝子の「低カドミウム品種」作出へ向けた有用性を示した。カドミウム耐性関連遺伝子の単離と応用に関しては,カドミウム耐性に関与する新規のQTLの有用性を示すとともに,OsPCS遺伝子の機能解析を大きく進展させた。
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Strategy for Future Research Activity |
低カドミウム品種確立へ向けて,本研究課題により単離されたOsLCTI遺伝子の変異系統の有効性をさらに検証する。具体的には,変異系統を野生型系統に戻し交雑して得られた後代を用いて,表現型と遺伝型の調査を行い,今後の育種へ向けた母本の確立を目指す。
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