フラストレート磁性体における新奇基底状態の解明-スピン液体と磁化ステップ現象-
Project/Area Number |
10J10454
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Research Category |
Grant-in-Aid for JSPS Fellows
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | 国内 |
Research Field |
物性Ⅱ(磁性・金属・低温)(実験)
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
吉田 紘行 独立行政法人物質・材料研究機構, 超伝導物性ユニット, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2010 – 2012
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2012)
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Budget Amount *help |
¥2,800,000 (Direct Cost: ¥2,800,000)
Fiscal Year 2012: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2011: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 2010: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | S=1/2カゴメ格子反強磁性体 / volborthite / 軌道スイッチ / β-vesignieite / フラストレーション / 磁化ステップ / 逐次磁気転移 / カゴメ格子反強磁性体 / 単結晶 / 幾何学的フラストレーション |
Research Abstract |
昨年度から引き続きS=1/2カゴメ格子反強磁性体volborthite, Cu_3V_2O_7(OH)_2・2H_2Oの基底状態、及び磁化ステップ現象を解明するための研究を行った。昨年度までにvolborthiteの単結晶合成に成功し、詳細な単結晶X線構造解析を行った結果、Cu^<2+>イオンのd_<3z2-r2>軌道が室温付近(T=310K)においてd_<x2-y2>世界で初めて軌道スイッチ現象を発見した。本年度(平成24年度)では、これまでに得られた、構造、軌道、磁性の結果を論文へまとめ、その論文はNature Communications誌へ掲載され、大きな注目を集めた。 volbonhiteの基底状態の解明に加えて、より多様な物質において、にカゴメ格子反強磁性体の基底状態を解明するため、新物質を合成し、その物性解明に取り組んだ。本年度では、昨年度から引き続き理想的なS=1/2カゴメ格子反強磁性体であるβ-vesignieite, BaCu_3V_2O_8(OH)_2の基底状態解明に取り組んだ。その結果、本物質では、T_N=9Kの弱強磁性を伴う反強磁性秩序が生じる事を見出した。また、カゴメ格子の理論モデルとの比較を行った結果、本物質における磁気秩序が、カゴメ格子上のDM相互作用に起因するものである事を明らかにし、これらの成果を論文へまとめ、Journal of the Materials Chemistry誌に投稿し、掲載された。 更に、他の候補物質として、β-vesignieiteのCuサイトをNiで全置換した新物質の合成に成功し、詳細な粉末X線構造解析により、構造を決定した。また、磁気測定から、逐次的磁気相転移が生じる事を明らかにした。 カゴメ格子反強磁性体においては、非常に物質例が少ない事から、実験的研究があまり進展していないという困難があったが、以上の成果は、カゴメ格子における物質の多様性をもたらし、より普遍的にカゴメ格子反強磁性体の磁性を理解する事を可能とした。また、以上の物質において観測された様々な磁性現象は、特異であり、今後のフラストレート磁性の研究において、重要な例をなすものであると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究においては、volborthiteの単結晶育成に成功したことにより、基底状態における逐次磁気相転移や、軌道スイッチング現象など、特異な磁性や軌道の変換現象を発見することに成功した。以上の成果は、これまでに計画していた以上に本物質の理解を進めたと考えられるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究により発見された軌道スイッチング現象は室温で電子軌道が劇的に変化する現象である。今後は本現象を外場等により制御する事が重要であり、それにより、室温で動作する素子としての機能を有する事が可能となると期待される。具体的には、磁場や電場の印加による軌道状態の変化を調べる事が、最も有効な方針であると考えられる。実験には、より高品質で大きな単結晶を育成する事が必要となる。今後は、より詳細な水熱合成条件の最適化が必要となるであろう。
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Report
(3 results)
Research Products
(21 results)