Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 1999: ¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
|
Research Abstract |
結晶中での水素結合による磁気的相互作用(水素-スピン)やその同位体置換効果(水素-スピン-格子),また結晶水やドープした非磁性イオンが磁性金属イオンの配位子場を変調させスピン転移挙動を制御する現象をマジック角回転重水素核固定高分解能NMRを用いた微視的視点から解明した(スピン-格子). 1.昨年度の成果に加えて,Cu(II)-OH・・・O-Cu(II)という短い水素結合を持つ物質Cu_2(H_3O_2)(XO_4)_2,M=Na、K、Rb,X=S、Seの磁気的相互作用を調べた.M=Rb,X=Seの塩では水素結合中のHをDに置換すると,強磁性的相互作用が50%近く変化するが,これは重水素化により水素-格子相互作用が変化し水素結合構造が変化することが要因であることを解明した.同位体置換効果は最も水素結合の短いM=Na,X=Sの塩でも見られるが,この場合は水素結合の明確な構造変化は見られず,電荷分布の変化と関連してさらに興味深い. 2.水素化物イオンにより架橋された磁性イオンが層状構造を作る磁性物質,Ni(OD)_2、Cu_2(OD)_3N(CN)_2の金属イオン層内での磁気的相互作用を重水素化した水酸化物イオンのNMRスペクトルにより調べた.Ni(OD)_2では層内に強磁気的相互作用が、Cu_2(OD)_3N(CN)_2では強磁性的相互作用を持つCu鎖と反強磁性的相互作用を持つCu鎖とが共存し拮抗していることがわかった. 3.結晶水の数により高スピン-低スピンのスピン転移挙動が大きく変わるFe(II)錯体[Fe(R-triazole)_3]X・nD_2Oでは,そのスピン転移温度近傍で水分子は極めて動きやすいこと,また水分子はFe(II)イオンのそばに取り込まれ配位子場に影響を与えていることをD-NMRに現われる超微細結合定数などから明らかにした. 4.Naイオンをドープすることによりスピン転移を引き起こすNa_<2X>Co_<1.5-X>[Fe(CN)_6]nD_2Oでは,重水素NMRから金属にごく接近した水と離れた水が1:1で存在すること,また^<13>Cをエンリッチした物質の^<13>C-NMRの超微細結合定数から炭素が配位しやすいFe(III)のスピン変化がスピン転移の要因であることを明らかにした.
|