Research Abstract |
軽希土類金属は水素を吸収しやすく,さらに水素含有量の増加とともに半導体化する性質を持つ.従って,軽希土類金属を含む強磁性薄膜・多層膜を作製して水素化することで,磁性体と半導体を組み合わせた新しいタイプの人工格子が作製できる.さらに水素化は格子膨張を誘発するため,水素化による軽希土類層の構造変化が,界面を通して磁性層に影響を与えると考えられ,優れた磁気特性を持つ材料が生まれることが期待される.本研究では,強磁性遷移金属(TM)としてCoを,軽希土類金属としてLaを用いた薄膜・多層膜を作製し,水素化を行い,それらの構造と磁性・伝導性を明らかにすることを目的とした. Co/La二層膜では,Pdキャップ層が無い場合,水素ガスを導入しても電気抵抗が変化しなかったが,Pdキャップ層が有る場合,水素ガス導入とともに電気抵抗が増加して一旦減少した後に,再び増加して十数分後には一定となり,水素化した.Pdのキャップ層は,水素を薄膜内に取り込む触媒の働きをしていると考えられ,Co/La薄膜の水素化にPd膜が必要であることがわかった.また,X線回折からもLa層が水素化していることが確認できた. Co/La/Co接合では,水素雰囲気中に置いた接合の電気抵抗は,時間の経過とともに増加し,La層が水素化したことが確認できた.水素化後,電気抵抗の温度変化を調べた結果,温度上昇とともに電気抵抗が減少した.従って,LaはLaHx層となり,半導体化することに成功した. Co/La多層膜では,Co膜厚を系統的に変えて磁化測定を行った結果,Co体積あたりの多層膜の飽和磁化は,バルクのCoの飽和磁化より小さく,Co膜厚とともに減少することがわかった.このことから,多層膜の界面にCo-La混合層が形成していると考えられる.多層膜を水素化したとき,飽和磁化は数%増加した.また,水素化によりX線の低角回折ピークが鋭くなったことと考えあわせると,水素化によりCo-La混合層が分解したと考えられる.
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