p53点突然変異マウス作成によるがん治療モデルの開発
Project/Area Number |
11140219
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 健司 東京大学, 医科学研究所, 助手 (90253533)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 和貴 東京大学, 医科学研究所, 寄付研究部門教員 (20217657)
饗場 篤 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (20271116)
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Project Period (FY) |
1999
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1999)
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Budget Amount *help |
¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
Fiscal Year 1999: ¥2,600,000 (Direct Cost: ¥2,600,000)
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Keywords | p53 / ES細胞 / ジーンターゲッティング / 標的遺伝子置換 / 点突然変異 / マウス / ノックアウトマウス / 胸腺リンパ腫 |
Research Abstract |
我々は、個体発がんにおけるp53遺伝子の突然変異と腫瘍の組織特異性とに注目し、p53欠損マウスを作成し解析してきた。ヒトの腫瘍から検出されるp53遺伝子の変異は点突然変異が最も多く、さらに変異のホットスポットがいくつか存在する。特に、Li-Fraumeni症候群のホットスポットの1つである、R248W変異は、大腸がんや胃がんで多く検出される。また、R249S変異は、肝がんで多く検出される。これらヒト腫瘍より見い出されるp53遺伝子の点突然変異がドミナントネガティブに働く可能性を考えると、特定の点突然変異が腫瘍の組織特異性を決めている可能性がある。そこで本研究は、p53遺伝子点突然変異(R245W)マウスとp53遺伝子欠失変異マウスを作成し、両者を解析し比較検討した。p53遺伝子点突然変異(R245W)マウスに認められた自然発生腫瘍は、その多くが胸腺リンパ腫であり、ヒトが多く認められる腫瘍の種類(大腸がんや胃がん)とは異なっていた。さらに、p53遺伝子欠失変異マウスとp53遺伝子点突然変異マウスの寿命と自然発生腫瘍を経過観察した結果、腫瘍の種類や発症時期がとても類似していた。以上の結果から、変異p53(R245W)は発症する腫瘍の特異性には関与せず、機能喪失型の変異であることが明かになった。一方、p53遺伝子欠失変異マウスは、高頻度に胸腺にリンパ腫を発症し、生後6ケ月以内に死亡する。p53欠損マウスに、リンパ球系でのみ正常p53を特異的に発現する遺伝子を導入したトランスジェニックマウスを作成した結果、p53欠損マウスの多くの死因である胸腺リンパ腫が減少し延命した。すなわちp53遺伝子はがん抑制遺伝子として機能し、p53欠損マウスは正常p53を発現させることによって、胸腺リンパ腫を抑制できることが解った。本研究よりヒトの腫瘍で頻繁に検出されるp53遺伝子点突然変異(R245W)は、機能喪失型の変異であることが明かになった。そこで、p53遺伝子欠失変異マウスの実験と同様に、点突然変異に対して正常遺伝子を導入することで腫瘍が抑制できるかどうか検討したい。近年、p53をターゲットにしたヒトに対する遺伝子治療も始まり、一部良好な結果が報告されている。我々が開発したヒトに多い点突然変異によってひき起こされるがんの疾患モデルは、今後もがん治療において有効な情報が得られるものと期待される。
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Report
(1 results)
Research Products
(5 results)