Budget Amount *help |
¥4,400,000 (Direct Cost: ¥4,400,000)
Fiscal Year 1999: ¥4,400,000 (Direct Cost: ¥4,400,000)
|
Research Abstract |
我々は,扁平上皮癌細胞の培養上清からfibroblast growth factor(FGF)-2と共精製した17kDaのヘパリン結合性分泌蛋白をHBp17と命名し,そのcDNA構造を明らかにすると共に,同蛋白がFGF-1,-2と可逆的に結合しその活性を制御することを明らかにしてきた。本研究においては,扁平上皮組織において特異的に発現され,悪性化に伴い過剰発現を示し,FGF-2の分泌・活性化・遊離に重要な働きをしている,HBp17/FGFBP分子の機能を明らかにするため,A431細胞の無血清培養上清より精製したHBp17蛋白を抗原としてHBp17/FGFBPに対するmonoclonal抗体を作成し,扁平上皮の悪性化過程におけるHBp17蛋白の発現を検討した。さらに,センスおよびアンチセンスHBp17/FGFBP cDNAを用いて扁平上皮癌細胞の増殖および造腫瘍性におけるHBp17の機能を明らかにし,HBp17/FGFBP分子を標的とした扁平上皮癌の分子標的療法を目指した。その結果,以下の諸点を明らかにした。 1.扁平上皮癌の悪性化過程においてHBp17/FGF-BPの発現は増大し,その発現パターンはFGF-2と一致した。 2.HBp17/FGF-BPセンスcDNA導入細胞は培養上清中への高いFGF-2の産生およびin vitroでの増殖能の亢進を示すと共に,ヌードマウスでの造腫瘍性を獲得した。 3.HBp17/FGF-BPアンチセンスcDNA導入細胞のin vitroおよびin vovoでの増殖能および造腫瘍性は低下した。 以下の結果から,HBp17/FGFBPは腫瘍由来FGF-2の細胞外への分泌および細胞外基質でのFGF-2の活性化に深く関与していることが明らかとなり,扁平上皮の悪性化過程に重要な働きをしている可能性が強く示唆された。また,HBp17/FGFBPの発現を遺伝子レベルで制御することにより,扁平上皮癌の浸潤・増殖や血管新生を抑制出来る可能性が考えられた。さらに,HBp17/FGFBP分子を指標とした扁平上皮癌の早期診断の可能性が示唆された。 今後electroporation法を用いて,ヌードマウス背部皮下移植ヒト扁平上皮癌組織にアンチセンスHBp17/FGFBPcDNAを直接導入し,その血管新生および増殖能・分化能を検討し,HBp17/FGFBPを標的とした扁平上皮癌の遺伝子診断・治療の臨床応用の可能性をさらに探究する。
|