Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
数個から数十個のアミノ酸残基からなるペプチドを組換えタンパク質の一部として大腸菌で増殖するファージ表面に発現させるディスプレイシステムは、抗体のエピトープ解析に使うエピトープ・ライブラリーや一本鎖抗体ライブラリーとして使われてきた。我々は、ラムダファージが直径55nmの小さな頭部に高度に凝縮した50kbpの直鎖状DNAを封入した粒子であることに注目し、動物細胞で機能するマーカー遺伝子を組み込んだファージをベースに、さまざまなペプチドをDタンパク質との融合タンパク質としてファージ粒子表面に提示してその機能を研究する系を作成した。この系では、Eタンパク質でできたDNAを含む殻(Shell)の外側に外来ペプチドが存在するので、DNAとの相互作用を考慮に入れずに任意のペプチドを自由に提示することができる。またペプチドのアミノ酸配列も遺伝子工学の手法で容易に改変することができる。本年度は、細胞膜を通過する活性を持つことが知られているヒト免疫不全ウイルス(HIV)の転写因子Tat由来のペプチドを提示した組換えファージを作成し、その活性を調べた。対象として使った細胞表面のインテグリンに結合するRGD-Phageではマーカー遺伝子の発現はほとんど検出できなかったが、Tat-Phageでは陽荷電リポソームとほぼ同等のマーカー遺伝子の発現を得ることができた。また、Tat-Phageによる遺伝子導入は血清によって阻害されず(むしろ促進される)、マウスの肝臓にin vivoで直接遺伝子を導入することもできた。また、阻害剤を使った実験から、Tat-Phageはエンドゾームを介した取り込み経路に依存せず、Caveolaeを介して細胞内に移行するユニークな系であることも示唆された。
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