Research Project
Grant-in-Aid for Scientific Research on Priority Areas (A)
近年の脳研究に対する国際的機運の高まりに伴い人間の高次な脳機能も重要な研究対象として扱われ、そのメカニズムの理解は急速に進展している。しかし、それでもなお意識や心というテーマを科学的に理解しようとする際、その抽象さ故に様々な困難がある。本研究はこの意識あるいはアウェアネスの時間的遷移を定量的かつ客観的に捉える手法を開発することを目的として行った。そのため機能局在部位の異なる視覚、聴覚、体性感覚刺激を同時呈示し、その結果に基づき開発する手法の検討を試みた。具体的には視覚、聴覚、体性感覚刺激を異なる周波数で標識して単独あるいは複数を組み合わせて同時に呈示し、各刺激による定常誘発応答の重畳した複合定常誘発脳磁界を68チャネルの全頭型MEGシステム(CTF Systems Inc.)により計測した。ここで定常誘発応答とは過渡的誘発応答と区別するための呼び名であり、定常応答を得るには刺激呈示間隔を短くかつ一定に与える。従来、過渡的誘発応答と同様、定常誘発応答も繰り返し試行で得られる原データを加算平均することにより得ていた。しかし加算平均過程において時々刻々変化する脳内プロセスのダイナミクスは消失してしまう。本研究では加算平均せずに単一試行の原データから定常誘発応答を分離・抽出するため、狭帯域通過フィルタと主成分分析とを組み合わせた新たな手法を開発した。さらに原データを固有ベクトル空間へ投射することによって時間情報の復元を試みた。これらの手法により分離・抽出された複合定常誘発脳磁界の短時間フーリエ解析、ウェーブレット解析を行い、各定常誘発脳磁界の時間-周波数構造並びに時間-スケール構造を調べ、異なる感覚刺激に対するアウェアネスの時間的な遷移を捉えることができた。
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