Budget Amount *help |
¥7,000,000 (Direct Cost: ¥7,000,000)
Fiscal Year 2000: ¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
Fiscal Year 1999: ¥3,500,000 (Direct Cost: ¥3,500,000)
|
Research Abstract |
本研究の目的は,前頭連合野における認知機能-とくに選択的注意とワーキングメモリーの脳内再現様式(マップ)とその可塑的変化を明らかにすることにある。 この問題にアプローチするため,2頭のサルに,眼球運動性の遅延反応課題(oculomotor delayed-response,ODR)と視覚探索課題(oculomotor visual search,OVS)を訓練した。ODR課題では,サルは数秒の遅延期の前に提示された視覚手掛り刺激の位置に向かって記憶誘導性サツケードを行うことが要求されるため,視空間性のワーキングメモリを調べるのに適当である。一方のOVS課題では,一つのターゲット刺激とその周りに妨害刺激(distracters)が配列した刺激配列が提示され,サルは妨害物の中からターゲットを選び出し,その方向に向かってサッケードすることが要求された。このOVS課題では,妨害物の中からターゲットを選び出す過程としての選択的注意が必要である。 サルがこれらの課題を遂行している間に前頭連合野の局所に微量のムシモール(5μg/ミリ(リットル),μ(リットル))を注入して局所的に機能脱落を起こし,課題遂行への効果を調べた。その結果,1)ODRとOVS課題がムシモール注入によって障害されること;2)障害された手掛り・ターゲット位置と注入部位の間にはトポグラフィカルな関係があること,そして3)OVSの障害を引き起こす注入部位は,ODRの障害と関係する部位よりもやや尾側に分布していたが,重複があること,がわかった。これらの結果は,前頭連合野においてメモリマップと注意マップが重複して(多重して)再現されていることを示唆する。 さらに,ODR課題を2年間訓練したサルに,OVS課題を訓練して同様の実験を行った結果,注意マップがメモリマップの周囲に排他的に再現されているというデータを得た。このことは,既に認知マップがある場合,そのマップを避ける形で(排他的に)別の認知マップが形成されることを示唆する。すなわち,前頭連合野の認知マップは,経験に応じてダイナミックに再現される可能性がある。今後はこの問題をさらに調べてゆく予定である。
|