Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本研究課題は、社会心理学の方法論に基づく実験とパネル研究によって、どのような内容のテレビゲームが人間の暴力性の発達に対して影響するかを明らかにしようとするものであった。第1に、実験によって、テレビゲーム内容の報奨性と現実性が、テレビゲーム使用の影響を規定するかを検討した。そのため、まず、実験で使うゲームソフトを選定する予備調査を行い、それぞれ高報奨高現実的、高報奨低現実的、低報奨高現実的、低報奨低現実的と見なされる4つのソフトを選定した。続いて、実験を実施し、お茶の水女子大学の学生に15分間、これらのソフトのいずれかで遊ばせるか、あるいは、中性的な映画を見せた。被験者は、このメディア接触の後、他者に電気ショックを与える機会が与えられ、そのときに電気ショックをどれくらい与えるかが観察された。これが暴力行動の指標であった。実験の結果、テレビゲームは大学生の暴力行動を促すこと、また、この影響は、報奨性や現実性が高い場合に強まることが示された。第2に、小学生と中学生を対象としたパネル研究によって、どのようなジャンルや性質のテレビゲームが子どもの暴力性に影響するかを検討した。ここでのパネル研究は、4ヶ月の間隔を空けて2回にわたって、被調査者のテレビゲーム使用と暴力性を測定するものであり、得られたパネルデータに交差遅れ効果モデル分析を適用し、テレビゲーム使用と暴力性の間の因果関係を推定した。その結果、アクションゲームなどが暴力性のいくつかの側面を高めうることが示された。また、被調査者が使用しているテレビゲームの性質(暴力の報奨性、現実性、強烈性など)の効果も併せて検討されたが、明瞭な効果は見出されなかった。