Research Abstract |
本研究は,高齢者の物理的・社会的・時間的空間を測定し,3つの空間の大きさと適応との関係を検討しようとするものである.平成11年度には測定方法の検討を行っている.今年度は予備調査を行い,最終的に,物理的空間は物理的な長さとして,社会的空間は社会的活動として,時間的空間は時間的展望として測定することにした.実際に用いたのは次の方法である.物理的空間は内山ら(1989)が用いた「ある特定の長さを作成する」方法,社会的空間は玉腰ら(1995)が用いた「社会活動指標」,時間的空間は白井(1989)の「時間的展望尺度」とCottle & Pleck(1969)の「ライン・テスト」である.適応に関しては,Lowton(1975)が作成した17項目の改訂版PGCモラール・スケールを用いて,主観的幸福感を測定した. 調査対象は,N大学生涯学習センターの受講生とK地域総合福祉センターの利用者で,65歳以上の高齢者82名(男性48名,女性33名,性別不明1名;平均年齢72.5歳)である.ただし,複数の測定法で,回答できないというケースがあった. 2001年の日本心理学会で発表するために,さらに検討を加えているところであるが,現在のところ次のような結果が得られている.(1)高齢者の物理的空間は,横方向に短くなっている可能性があること,(2)時間的空間では,過去が長く,現在と未来が同じくらいの長さであること,(3)物理的空間と時間的空間の間に何らかの関係がある可能性があること,(4)社会的空間と主観的幸福感の間に関係があること,(5)時間的空間と主観的幸福感の間に関係があること,などが明らかになった.
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