Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
ペスタロッチー教育学における心情陶冶と新教育運動期教育学における心情陶冶を軸として、心情陶冶における時代・文化をこえた普遍性-(1)、心情陶冶が時代・文化によって受ける制約・変容-(2)について考察を進める。認識能力・心情能力・運動能力の調和的発達に収斂されるペスタロッチー教育学の枠組は、近年の研究で指摘されているように経験主義・敬虔主義という18世紀の時代思潮を反映しつつ形成されたものであるが、その核心をなすのは感覚的なものと超感覚的なものを関係づける「心情」に向けられた教育である。ここで具体的に育成されるのは自己信頼や自己肯定へと連なっていく「自分と折り合う能力」であるが、ペスタロッチーがここで愛される権威の存在を要請していることから明らかとなるように、この能力は社会性や共感性へと連なっていく「他者と折り合う能力」との相関によってのみ育成される。新教育運動は他者との関わり合いの教育構想においてより積極的な展開を示すものの、ペスタロッチー教育学にみられる心情陶冶の過程を大筋において継承しており、時代・文化をこえた普遍性が認められる。一方、ペスタロッチー教育学における心情陶冶の拠点をなす宗教性については時代・文化によって受ける制約・変容が指摘される。心情陶冶にみられる宗教軽視の傾向と宗教性重視の傾向はペスタロッチーの時代そして新教育運動の時代それぞれに論争の対象となり、それぞれに暫定的な結論を足跡として残しながら現代に至っている。社会学的な視野もとりこみながら「心の教育」における新しい宗教性の解釈を求めていく姿勢が今後さらに要求されることになるだろう。
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