Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
本年度は、研究の総括として、資財帳の基礎的史料調査ならびにこれまでの両年度の研究成果をもとに、論文執筆を行った。論文では、資財帳の記載をもとに、寺院の伽藍構成について検討した。その結果、奈良時代の資財帳は、仏・法・僧、すなわち三宝の順に記載され、仏には仏像、法には経典、僧には聖僧・衆僧が、所属の堂舎に関係なく配列されていること、大衆院も伽藍に含まれること、塔でも中心建築物から離れれば伽藍に含まれない場合があることが判明した。伽藍は、「七堂伽藍」という言葉に惑わされず解釈するべきであるとの結論に達した。一方、平安時代になると、仏の空間を金堂、法の空間を講堂・鐘楼、僧の空間を僧坊・食堂と認識し、建造物ごとに三宝の空間とみなす概念を表す資財帳が出現する。他方、三宝の区別がなくなり、建築物ごとに資財を列記するものも現れ、これが中世の寺院目録へとつながっていくことを明らかにした。ついで、大衆院と政所の関係を検討し、本来、政所は大衆院に含まれていたものの、寺院規模が大きくなればなるほど、また時代が降れば降るほど、政所が大衆院から独立する傾向があることを指摘した。この成果は、従来、大衆院と政所を異なった空間として認識していた研究の再考をせまるものである。
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