Project/Area Number |
11720023
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Civil law
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平嶋 竜太 筑波大学, 社会科学系, 助教授 (70302792)
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Project Period (FY) |
1999 – 2000
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2000)
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Budget Amount *help |
¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
Fiscal Year 2000: ¥700,000 (Direct Cost: ¥700,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,000,000 (Direct Cost: ¥1,000,000)
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Keywords | 特許法 / コンピュータ・ソフトウエア / 情報財 / UCITA / 技術的保護手段 / 情報ライセンス契約 / 情報通信ネットワーク / 知的財産権 / 情報通信 / 取引法制 / 契約法 / インターネット / 市場 |
Research Abstract |
本研究においては、情報通信ネットワーク基盤の発展・普及に伴う情報財取引・流通形態の変化に対応した、情報財一般に関する新しい取引法制構築への基礎となる研究を行うことを目的とした。とりわけ、今後の情報財取引形態の趨勢として、媒体を介した形式から情報通信ネットワークを介した形式という、より直接的なものへとシフトすることが考えられることから、研究計画においては、新しい情報財取引法制モデルの制度設計へ向けたファクターの抽出、情報ライセンス契約と知的財産法制の棲み分けに関する理論的考察を主たる研究課題として設定した。 新しい情報財取引法制モデルの制度設計へ向けたファクター抽出の足掛かりとして、まず、ネットワーク上での情報財保護の現状と課題について明らかにする研究を行った。具体的には、現在の知的財産法制による情報財保護の限界の解明という分析作業を中心に行った。研究対象としては、現在そして今後も情報財の中心的位置を占める、コンピュータ・ソフトウエアを取り上げ、ネットワーク上で取引・流通される状況を前提に、特許法、著作権法による保護の可能性と限界を明らかにした。おりしも、特許法におけるコンピュータ・ソフトウエアの取扱いを巡って、審査実務運用は大きな改変期を迎えており、改訂された特許庁の審査基準についての批判的検討も行いつつ、特許法における「発明」や「実施」といった諸概念をネットワーク時代に相応しいものへと法改正することで、根本的な問題解決を図る必要性を提示した。 また、知的財産法制以外による情報財取引法制として、情報ライセンス契約と技術的保護手段の組み合わせという選択肢の提示する可能性についても検討し、ネットワークが情報財取引のインフラストラクチャーとなる時代においては、知的財産法制の有効かつ柔軟な代替的手段として機能しうること、及び広く普及することが期されることを指摘した。一方、その反面では、未だ数多くの問題点が内在していることも確認される。とりわけ、知的財産法制との比較によれば、技術的保護手段回避に対する法的規制と契約の組合せは、情報財取引の当事者間に著しいアンバランスをもたらし得る可能性があり、自由な情報の流通という見地から安全弁としての機能も果たしてきた知的財産法制の役割を無力化する恐れが生じることが明らかとなった。この点に関連して、比較法的見地からは、アメリカにおける情報ライセンスモデル契約法であるUCC2Bが、1999年にUCITA(Uniform Computer Information Transaction Act)として成立したことから、UCITAにおける規定内容について分析し、制定を巡る学説における議論や問題提起を検討した。また、個別の適用例として、次世代半導体集積回路として期待されるシステムLSIの設計情報である設計資産(IP)について、情報通信ネットワークを介して広く取引しようとする試みが昨今試みられていることから、このようなIP取引におけるUCITA適用の可能性・問題点についても注目した。 以上のように、本研究によって、IT(情報技術)の普及・情報通信ネットワークの広がりに伴う情報財取引の制度的基盤となる新しい情報財取引法制のあり方に関する方向性が、ある程度明らかになったといえる。今後は、本研究の成果を土台として、さらに個別の問題点・課題についての詳細な研究に取り組む必要性があるものと考えられる。
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