Budget Amount *help |
¥1,600,000 (Direct Cost: ¥1,600,000)
Fiscal Year 2000: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 1999: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
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Research Abstract |
比較会計制度論的観点から,「金融商品の会計」および「包括利益」の制度化過程の検討を行った.比較制度論的観点を共有した先行研究の検討を行った結果,津守や山地らによって代表される従来の視角が,会計制度による社会的統制というマクロ決定論的傾向を持っている一方で,英米の会計基準設定機関は情報有用性をキーワードとするミクロ還元論的立場にあることが確認された. そこで,会計制度論におけるマクロ決定論とミクロ還元論の両者を包含した新たな視角を確立するため,企業統治論における有力理論のひとつであるハーシュマン(A.O.Hirschman)のExit-Voiceアプローチを,ポランニ(M.Polanyi)およびサイモン(H.A.Simon)の理論を援用し批判的に検討し,分析概念の再構築をはかった,その結果,会計を3つの側面(ミクロ合理的意思決定の側面,集合行為論的合意形成の側面,教育学習的自己同定の側面)から比較制度論的に把握すること可能となった. 1980年代以降のイギリスでは,オフバランスシート問題を端緒とするクリエイティブ・アカウンティング問題が会計制度改革の主要な動因であった.旧来の会計実践と現実経済の不適合性が高まるとともに,会計基準設定過程における主流派理論の重要性が増大し,制度的には概念枠組みの設定等を経ることで会計目的の純化が進行し,基準設定はミクロ合理的意思決定の側面から判断されるべきものとなった.それ以外の側面は,明示的な考慮対象ではなくなった.このような会計基準設定過程の変容は,基準内部の整合性を過大評価する傾向と,ミクロ合理的意思決定の側面以外の側面における会計の役割の過小評価を伴っている.金融商品の会計基準にみられる,効率的市場仮説を理論的根拠とした「全面的な公正価値評価の適用」の主張は,その代表的なものといえる.
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