Budget Amount *help |
¥2,300,000 (Direct Cost: ¥2,300,000)
Fiscal Year 2000: ¥1,100,000 (Direct Cost: ¥1,100,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,200,000 (Direct Cost: ¥1,200,000)
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Research Abstract |
SrCu_2(BO_3)_2においてスピン1/2をもつCuのダイマーが二次元面上で直交する特殊な構造に興味をもち磁気的性質を調べた.試料は当初は粉末試料を用いていたが工夫と試行錯誤を重ねた結果,cm単位の良質な大型単結晶育成に成功した.帯磁率の温度変化,比熱測定やESR測定などから結果,この物質がダイマー内相互作用Jとダイマー間相互作用J′の間に強いフラストレーションのある二次元スピンギャップ系であることを示した.J=100K,J′=68K,Δ=35Kと見積もられた.この物質が理論家ShastryとSutherlandによって約20年前に考察された"厳密な基底状態"をもつ模型とトポロジカルに等価であることがわかり多くの理論家と実験家の注目を集めた. 美しい基底状態だけではなく,励起状態にも面白い性質を見いだした.それが磁化曲線における量子化されたプラトーである.1.5K以下で45Tまでのパルス磁場磁化測定によって飽和磁化の1/3,1/4,1/8にあたる磁化のところにプラトーを観測した.これはダイマーの直交性によってトリプレット励起が局在した結果生じるものであることがわかった.また非弾性中性子散乱実験によってトリプレット一個の励起は著しく局在しているが二個以上の場合はトリプレット間の相関により動きやすくなるというこの系特有の不思議な磁気励起現象を新たに見いだした. 最近ではX線回折などの実験によって395Kで構造相転移が存在することが明らかにした.この転移温度以上ではもともと凸凹があったダイマー面が完全にフラットになる.この転移による磁性の影響などを現在検討しているところである.SrCu_2(BO_3)_2は基底一重項状態と反強磁性状態の量子臨界点近傍にあることが理論的に示唆されたためSrをCa,Baなどに置換して相互作用を変化させることを試みたが反強磁性相を誘起することまでには至っていない.
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