Budget Amount *help |
¥2,100,000 (Direct Cost: ¥2,100,000)
Fiscal Year 2000: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,300,000 (Direct Cost: ¥1,300,000)
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Research Abstract |
本研究では,現代の通信技術の基礎である誤り訂正符号において,畳み込み符号と呼ばれる符号化とその復号過程がスピングラスと呼ばれる磁性体の基底状態探索と等価であることに注目し,その復号化を高速化,精密化するために,エネルギー関数に量子力学的な状態遷移を表す横磁場項を導入し,この横磁場の強さが復号の精度とスピードにいかに影響するかを統計力学的な解析手法を用いて明らかにした.中でも,2値画像の送信とその復元過程(画像修復)にターゲットを絞り,その詳細を明らかにすることに成功した.具体的には,統計力学的な手法で厳密に解ける画像修復系の統計モデル(無限レンジモデル)を経路積分及びレプリカ法に基づき解析することにより,原画像の最大周辺事後確率推定下での修復率を量子力学的遷移項の強さを表すパラメータの関数として導出した.この結果,有限の量子力学的遷移項値で修復率が最大となることが明らかとなった.また,具体的な画像修復にこの手法を適用する場合,事後確率による期待値計算の部分を鈴木-トロッター分解に基づく量子モンテカルロ法で遂行することが考えられる.しかし,この計算時間はシステムサイズに対し指数オーダーの計算量がかかるため,現実の画像復元の立場からは不十分である.そこで,本研究では平均場近似に基づく反復アルゴリズムを構成し,厳密に解ける統計モデルで導出した最適な量子力学的遷移項値でアルゴリズムを動作させることにより,高速でかつ高精度な復元が可能となることを示した.さらに,この2値画像に対するアルゴリズムを濃淡画像に応用する下準備として,濃淡画像修復の最大周辺事後確率推定の性能を,画素をカイラルポッツスピン及び,多値イジングスピンで表現し,修復率の温度,磁場(これらをハイパーパラメータと総称する)依存性を解析的に求めることにより評価した.この結果,最良な修復率を与えるハイパーパラメータの値は多値イジングスピンでは真の画像及びノイズレベルのパラメータ値となるが,カイラルポッツモデルではそうならないことが明らかとなった.また,事後確率での平均値計算でマルコフ鎖モンテカルロ法を用いた場合の各種統計量の平衡状態への緩和の過程を明らかにするために,無限レンジモデルを導入し,微視的状態の存在確率に関するマスター方程式から縮約操作を用いて巨視的統計量の時間発展の方程式を導出した.これにより画像修復の動力学における引き込み領域や緩和速度等を議論することに成功した.
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