不安定核Beイオンの精密分光を目的とした液体He冷却線形イオントラップの開発
Project/Area Number |
11740245
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
物理学一般
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
岡田 邦宏 上智大学, 理工学部, 助手 (90311993)
|
Project Period (FY) |
1999 – 2000
|
Project Status |
Completed (Fiscal Year 2000)
|
Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2000: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
|
Keywords | 線形イオントラップ / ベリリウム / レーザー冷却 / Heガス冷却 / 超微細構造分光 |
Research Abstract |
[概要]昨年度に開発した液体He冷却線形イオントラップを用いてガス冷却及びレーザー冷却されたイオン(不安定核超微細構造分光の対象であるBe^+及びCa^+イオン)のトラップの寿命測定をレーザー誘起蛍光法を利用して行い,冷却型線形イオントラップの有効性を実験的に検証した. [実験・結果]Be^+の実験では,Heガス冷却及びレーザー冷却状態での閉じ込めの寿命を測定した.Beは質量数が9(安定核の場合)と特に軽い元素である.よって,残留ガスとの衝突加熱効果が大きく,これまでHeガス冷却を利用した実験の報告はない.しかし,イオントラップ外部で生成されたイオンの入射・捕獲をしなければならない不安定核実験の場合,トラッピング初期過程におけるHeガス冷却法の利用は不可欠である.そこで本研究では液体He冷却された線形トラップ中にHeガスを導入し,トラップの寿命に対する効果を観測した.その結果,室温の線形トラップでは数10秒程度であった寿命が約15分まで延長されることを確認した(ガス圧約10^<-4>Paの場合).トラップ寿命の飛躍的な延びは冷却パネルにおけるクライオポンピング効果によって導入ガス中の不純物が大幅に取り除かれたことと,Heガス自身が冷却パネルで冷却されたためにイオンに対するガス冷却が有効に働いたことが理由と考えられる.さらに途中でガスを遮断した場合,時間経過(数10秒〜数分程度)とともに蛍光強度が増加する様子が観測され,ガス冷却からレーザー冷却への移行も可能であることを確認した.また,本研究ではレーザー冷却されたBe^+のトラップ寿命の測定も行った.軽元素イオンであるBe^+の場合,たとえレーザー冷却されていても僅かな残留ガスとの衝突による加熱・消失を避けることができないが(真空度〜10^<-7>Paの場合,室温状態でのトラップ寿命は数分〜10分程度),液体He冷却線形イオントラップを用いた場合,トラップの寿命が約3時間まで延長され,さらに結晶化されたイオン集団をロスすることなく約30分間保持することが可能となった.一方,Caイオンを用いた実験では液体窒素冷却された線形イオントラップを利用し,Heガス冷却下でのトラップ寿命の測定を試みた.Beの場合と同様に寿命の飛躍的な延長を確認できた.トラップの寿命は少なくとも10時間まで延長され,長時間にわたる測定では液体窒素による冷却を続ける限りイオンのレーザー誘起蛍光が消失することはなかった(4日間の閉じ込めまでを確認).よって長寿命の不安定Ca同位体の超微細構造分光に対しては液体窒素冷却のみで十分である.なお,Cryogenic領域の真空度は直接測定できないが,コンダクタンスとガス放出率の見積りから,トラップ周辺では10^<-10>Pa以下であると推定できる(ガス導入なし,液体He冷却の場合). [結論]液体He冷却線形イオントラップはレーザー冷却されたイオンのトラップ寿命の延長に大きな効果があり,残留ガスに起因するイオンロスを極力小さくできることを実証した.また,Heガス冷却された軽元素イオンの寿命の延長に対しても非常に有効であることを実験的に初めて確認した.
|
Report
(2 results)
Research Products
(1 results)