Research Abstract |
月の裏側の直径2000kmという巨大クレーターには,45億年前のマグマオーシャンの固化によって強く分化したマントル物質が露出しており,2004年度に打ち上げが予定されている大型月探査衛星による赤外反射スペクトル測定が待ち望まれている。この衛星のデータを月の科学の進展に資するためには,クレーター形成後にマントル鉱物が受けた,太陽風による還元風化作用のスペクトルへの影響を評価する必要がある。この問題を室内実験によって調べるために,300MHzワイドボア型核磁気共鳴分光計を用いて,鉱物中の鉄をはじめとする遷移金属元素の化学結合状態の測定を行うための試験研究を進めている。本研究の目的は,このような多核核磁気共鳴分光測定に必要な,RFプローブをはじめとする高周波信号を扱う実験装置の製作及び試験を行い,データ取得への道筋をつけることである。 本年度は,昨年度に引き続いて,プローブ組立てに用いる各種高周波部品の電気的特性の測定を行った。また,S/N比の低い多核核磁気共鳴分光測定に対応するために,核磁気共鳴分光計のオペアンプを用いた信号増幅部を改良し,ゲインとオフセットレベルを可変抵抗によって調製できるようにした。さらに^1Hの核磁気共鳴信号検出を行った試作プローブについて,高磁場中でプローブに誘起される機械的振動を抑えるための改良を行った。今後,多核種の核磁気共鳴測定に向けたプローブを製作し,上記目的の実現を目指す予定である。
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