Project/Area Number |
11740327
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Physical chemistry
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
和泉 研二 山口大学, 教育学部, 助教授 (70260677)
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Project Period (FY) |
1999 – 2000
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2000)
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Budget Amount *help |
¥1,900,000 (Direct Cost: ¥1,900,000)
Fiscal Year 2000: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Keywords | インスリン / 凝集体 / 六量体 / 動的光散乱 / 拡散律速 / 結晶成長 / 動的光散乱法 / 核形成 / 蛋白質 |
Research Abstract |
従来、水溶液中での凝集体生成機構では、自発的に成長を始めるのに必要な核の大きさ(臨界半径)は過飽和度に依存するとされてきた。ところが、析出に伴う溶液濃度変化の自己凝集理論に基づく解析から、臨界核を構成する分子数は4個程度であり過飽和度に寄らず一定であるという報告が、リゾチームおよびインスリンでなされた。そこで本研究では、短時間で分子から凝集体のサイズが測定可能な動的光散乱法によって、水溶液からのインスリン凝集体生成過程を直接追跡し、その凝集機構の解明を目指した。 実験の結果、凝集体を形成している途中のインスリン水溶液中には、時間の経過によらず半径が約2.8nmの粒子(ユニット)と、時間とともに成長する凝集体の2種類が存在することが分かった。しかし、複数個の分子からなる凝集体に相当するような粒子は捕えられなかった。 観測されたユニットはその大きさからインスリン六量体である。成長による凝集体の大きさの変化は、時間のほぼ1/2.35(±0.4)乗に比例した。拡散律速による凝集体形成モデル(DLA)および凝集体同士による凝集体形成も含めたモデル(DLCA)によれば、その指数は約1/2.5および1/1.8となる。DLAやDLCA機構によって成長した凝集体は、フラクタル構造を持つ。そこで、溶液の少量を素早く乾燥し電子顕微鏡で観察したが、凝集体の形状はほぼ球であった。従って、インスリン凝集体の成長は、リゾチームでしばしば指摘されてきたDLAやDLCA機構では説明し難い。また、球状の凝集体の一部には、結晶相へ転移する途中と思われる平面をもつ凝集体も観察された。これは、インスリンの結晶成長が、一旦凝集体の状態を経てから形成される、いわゆるオストワルドの段階則に従っている可能性があることを示している。 これらの結果は、従来の説とは必ずしも一致せず、興味深い。今後さらに研究を進める必要がある。
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