クラスターイオンの光誘起蒸発過程の観測と単分子反応理論に基づいたモデルの検証
Project/Area Number |
11740329
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Physical chemistry
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大橋 和彦 九州大学, 大学院・理学研究院, 助教授 (80213825)
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Project Period (FY) |
1999 – 2000
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 2000)
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Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2000: ¥500,000 (Direct Cost: ¥500,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,700,000 (Direct Cost: ¥1,700,000)
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Keywords | ベンジルアルコール / アニリン / クラスターイオン / 光誘起蒸発過程 / 振動励起 / エネルギー再分配 / 反応速度 / 単分子反応理論 / ベンゼン |
Research Abstract |
本年度は,ベンゼン以外の分子のクラスターイオンを研究対象とするために,まず,ベンジルアルコールおよびアニリンのホモダイマーイオン,ベンジルアルコールあるいはアニリンとアルゴンあるいは水あるいはベンゼンとのヘテロダイマーイオンについて,赤外スペクトルの測定を行った.つづいて,ベンジルアルコールーベンゼンヘテロダイマーイオンのOH伸縮振動(3662cm^<-1>)を励起し,前期解離による生成物イオンの強度とレーザー強度との関係を調べたところ,赤外光を1光子吸収しただけで解離を起こしていることがわかった.ダイマーイオンの結合エネルギーは4500cm^<-1>程度であると見積もることができるので,内部エネルギーがゼロに近い場合は1光子を吸収しただけでは解離限界に到達しない.今回の結果は,断熱膨張法を用いているのにもかかわらず冷却効果が十分ではなく,ある程度の内部エネルギーをもったイオンが生成し,それが赤外光を1光子吸収しただけで解離限界を越えたためであると解釈することができる.ところが,ベンジルアルコールホモダイマーイオンのOH伸縮振動(3639cm^<-1>)を励起した場合には,ほぼ同じ条件であるのにもかかわらず,ほとんど前期解離を起こさないことがわかった.両イオンの間で結合エネルギーの値が極端に違うことは考えにくく,分子間結合の様式の違いにより解離に至るまでの機構が異なっている可能性がある. これまでに得られた結果を総合すると,ベンゼン等のクラスターイオンの蒸発過程に関しては,クラスターの内部エネルギーが全て分子間振動に分配されるとして,位相空間を分子間振動のみに限定してしまう統計理論では蒸発速度を説明することが不可能であり,クラスターを構成する分子の分子内振動も一部分とりこんだ位相空間を考えなければならないことが明らかとなった.
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Report
(2 results)
Research Products
(2 results)