Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
ユウレイボヤ卵は受精直後に一過的な細胞内カルシウムの増大が起き、それを引き金に細胞質の分層を伴うダイナミックな卵の変形が起こり、これがその後の発生の極性を決定づけている。この現象にはアクチン細胞骨格系の関与が解っているが、細胞内カルシウムの増大からの作用機作がまだ不明であった。そこで本研究では、細胞骨格アクチンの重合・脱重合を制御し、卵割に関与していることが知られている低分子量Gタンパク質rhoに着目し、その卵形変化への関与と細胞内カルシウム増大との因果関係について検討した。その結果、ユウレイボヤ卵にもC3酵素によりADPリボシル化される23kDaのタンパク質が存在することがわかり、これがユウレイボヤrhoタンパク質であると考えられる。また、rho特異的阻害剤であるC3酵素により受精直後の卵形変化が阻害された。このC3酵素を処理した卵は卵表層のアクチン繊維が強く集積し、バンドル状になっている様子が観察された。さらにこのC3酵素による卵形変化の阻害は、細胞内カルシウムの変動には影響を与えないこと、イノシトール3リン酸やカルシウムイオノフォアで人為的に一過的な卵内カルシウム濃度の上昇を引き起こすことで誘導される卵形変化もまたC3酵素によって阻害されることが明らかとなった。また、Gタンパク質の活性化剤であるGTP-γ-Sによっても卵形変化は誘導され、一方Gタンパク質の阻害剤であるGTP-β-Sで卵形変化は阻害された。更にGTP-γ-Sによっても卵表層のアクチン繊維の集積が見られた。以上の結果より、卵形変化は受精による刺激によるイノシトール3リン酸誘導型の細胞内カルシウム濃度上昇がrhoを活性化し、アクチン繊維の挙動を制御していると考えられる。
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