Research Abstract |
本研究は,氷蓄熱システムにおいて生成される氷に焦点を絞り,この多孔質固相を試料として伝熱板に押し付けながら溶融させる接触溶融現象を実験的,解析的に検討を行うものである. 平成11年度では,多孔質固相を伝熱面上で溶融させ,溶融量の測定を行った.粒子径が0.5mm以下のものから20mmのものまで7種類に分別した粒子を固めて試料とした.その結果,粒子径が4.0mm程度までにおいては,粒子径の増大に伴い溶融量は増大し,それ以降の粒子からなる試料では,粒子径の増加と共に溶融量は減少することがわかった.また,粒子が個々に接触溶融しているとしたモデルで解析を行い,直径が4.0mm以上の粒子から構成された試料では,溶融量の解析結果と実験結果は良い一致が見られた. 平成12年度では,多孔質内を通過する溶融液体を考慮に入れた数値解析を行った.まずそのために,多孔質固相の透過率,毛管力を測定した.数値解析においては,溶けた液体が試料に浸透しながら試料全体で接触溶融が行っているとした計算モデルを提案し,計算を行った.その結果,粒子径が0.5mm以下の粒子から構成される試料の溶融量と良い一致を示した. 以上の結果から,粒子径が小さい領域では,粒子径の増大に伴い,透過率の増加により溶けた液体が多孔体内部を通過して排出されやすく,液膜が薄くなるために溶融量が増加し,粒子径が大きい領域では,個々の接触溶融の形態に近づくため,粒子径の増加と共に溶融量が減少するものと思われる.また,粒子径が小さい場合には,本年度に提案した溶融モデルで,また粒子径が大きい場合には平成11年度に提案したモデルで現象を再現できることがわかった.しかし,中間的な大きさの粒子径からなる試料については,どちらのモデルとも良い一致が見られなかったことから,この領域においては,個々の粒子の接触溶融と試料全体での溶融との複合的な溶融現象になっているものと思われる.
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