Research Abstract |
本研究では、II-III2-VI4族化合物半導体という未知の結晶の育成と、これら結晶の物性解明を目的としている。ここでII-III2-VI4族とは、III2-VI3族とII-VI族の化合物であり、ZnGa2Se4、ZnGa2Te4、ZnIn2Se4、ZnIn2Te4などが例としてあげられる。 本研究ではまずZnIn2Te4結晶の育成を垂直ブリッジマン炉にて行った。作成した結晶はX線回折による構造評価を行い、ZnIn2Te4多結晶であることを確認した。分光エリプソメーターによる光学測定を行った結果、臨界点を反映した構造が観測された。このスペクトルを微分し、スタンダード・クリティカルポイント・モデルにて解析を行うことで、1.40eV,1.80eV,2.58eV,3.05eV,3.60eV,4.13eV,5.08eVに臨界点の存在が確認された。また、基礎吸収端に関しては光吸収測定を用いても測定を行い正確な臨界点エネルギー値を調べた。ZnIn2Te4結晶において基礎吸収端のみならず不透明領域における臨界点エネルギー値を正確に観測したのは本研究が初めてである。さらに、経験的擬ポテンシャル法を用いたバンド計算、複素誘電率の計算を行い、これら臨界点の起源を明らかにした。価電子帯の電子状態に対しては、X線光電子分光法を用いて測定を行い、状態密度の計算結果との比較を行った。 フィリップスの理論によると、II-III2-VI4族半導体はアモルファスを形成しやすい系である事が予想される。このことを確認するため、アンプルを急冷することによりZnIn2Te4バルク・アモルファス半導体の形成を試みた。作成した試料を分光エリプソメーターにて測定した結果、複素誘電率の虚部は、結晶のスペクトルとは大きく異なり、テトラヘドラル型アモルファス半導体に特有な一つの山を有するブロードなスペクトルとなった。このことにより、ZnIn2Te4バルク・アモルファス半導体の形成が確認できた。また、このスペクトルをタウク及びジェリソンらの提唱するモデルで解析を行った結果、アモルファスZnIn2Te4の光学エネルギーギャップの値は1.1eVであることがわかった。
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