Research Abstract |
本研究では,鋼構造物,特に,鋼製橋脚における地震時脆性破壊の発生要因を明らかにすることを目的とし,鋼材特性面から,地震時脆性破壊の起点となるき裂の先端の鈍さおよび地震時に鋼材が受ける塑性歪み履歴に着目し検討を行った。 鋭い先端を有するき裂を起点とする脆性破壊では,鋼素材の破壊靭性あるいは地震時の塑性歪み履歴による破壊靭性の劣化が最も重要な発生要因である.そこで,本研究では,まず鋼製橋脚の弾塑性FEM地震応答解析を行い,10%を超える大きな塑性歪み履歴が生じる可能性があること,そのような大歪みが発生する場合,歪みは引張あるいは圧縮側のいずれかに偏って変動すること等の鋼製橋脚に生じる塑性歪み履歴の特性を明らかにした.このことを踏まえて,5パターンの塑性歪み履歴,10%と5%の2つの歪みレベルを設定し,2種類の鋼材に対して塑性歪み履歴を導入後,CTOD試験により鋼材の破壊靭性の変化を調査した.その結果,鋼種により素材の破壊靭性および塑性歪み履歴による靭性劣化の程度が著しく異なることが明らかとなった. 一方,鈍い先端を有する塑性歪み疲労き裂から発生する脆性破壊に関しては、まず地震時の塑性歪み履歴により発生する塑性歪み疲労き裂がどの程度鈍い先端を有しているかを調べるために,縦リブ溶接継手試験体を用意し,3点曲げ塑性歪み疲労試験を行い、き裂を発生させ,その先端の開口変位を測定した。その結果、地震時に生じる塑性歪み疲労き裂は、先端開口変位が0.1mm以上と著しく鈍い先端を有していることが明らかとなった。次にそのような鈍いき裂から脆性破壊が発生可能性について検討するため、0.1mm程度の亀裂先端開口変位を有する塑性歪み疲労亀裂を導入した3点曲げ試験片に対し低温条件下で破壊実験を行った。その結果、鋼種により,き裂先端の鈍さに対する感度が異なり,鈍い先端を有するき裂のからの脆性破壊の発生可能性は,鋼種に依存することが明らかとなった.
|