Research Abstract |
昨年度に官能検査手法を用いて構成した,3種の傾斜角(4°,7°,10°)の斜路を車椅子を用いて走行(上りおよび下り)した際の,すべりの観点からの安全性評価尺度(以降,すべり評価尺度と呼ぶ)に対応する物理量の検討を行った。 既往の自転車と路面間のすべりを測定できるすべり試験機をもとに,車椅子用すべり試験機の設計・試作を行った。このすべり試験機は,試料上に水平に設置し,対象とする車椅子のタイヤを切り取って貼付したすべり片を重錘により15kgの鉛直荷重を載荷しながら,所定の牽引速度(5cm/s)で引っ張ったときの引張荷重定常値Pmaxを求め,次式により,基本物理量C.S.R-BIKEを求めるものである。C.S.R-BIKE=Pmax(kgf)/15(kgf) 本研究においては,官能検査時の検査員の感想を聞いた結果,すべりはおもに後輪で感じると判断されたことから,車椅子の後輪のタイヤを切り取ってすべり片とし,官能検査時の検査試料を水平に設置してC.S.R-BIKEを測定した。すべり評価尺度とC.S.R-BIKEの対応を検討した結果,上り,下りいずれの場合も,全体としては両者の間に明確な対応はみられないが,傾斜角度ごとにみると,大まかな対応つまりC.S.R-BIKEに比例して安全と判断されている傾向が見受けられたことから,傾斜角度を考慮した次式を検討した。C.S.R-BIKE-α・sinθ 種々検討の結果,上りの場合はα=4,下りの場合はα=7で,すべり評価尺度と十分な対応を示すことができた。すなわち,上りの場合,物理量(C.S.R-BIKE-4sinθ),下りの場合,物理量(C.S.R-BIKE-7sinθ)を用いて,車椅子走行時のすべりの観点からの安全性を評価できることことがわかった。以上の検討結果より,すべり評価尺度と物理量の対応図を評価指標とし,物理量の測定方法を含め,車椅子走行時のすべりの観点からの安全性の評価方法として提示した。
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