Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2000: ¥800,000 (Direct Cost: ¥800,000)
Fiscal Year 1999: ¥1,400,000 (Direct Cost: ¥1,400,000)
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Research Abstract |
平成11年度に行った宝塚市雲雀丘住宅地の調査成果をもとに,本年度は,同住宅地の開発資料に読みとれる自然環境と宅地開発との関係について考察を加えた。雲雀丘住宅地は,斜面地の住宅地開発としては最初期の事例で,その開発手法はそれまでの住宅地には見られない自然環境との整合性を配慮した内容であったことを指摘するとともに,住宅を建設する部分以外は土地を造成しないこと,既存樹木を伐採しないこと,土砂流出に備えた強固な排水路を確保すること,などが具体的方法として採られていたことを明らかにした。また,同時に生垣の設置や植樹など住民による自然環境の創出もはかられたことを解明した。 本年度はさらに,雲雀丘住宅地に隣接する花屋敷住宅地,さらに北部の山地に計画された新花屋敷温泉住宅地についても調査,分析を進めた。これらの事例は,地価の安い山林に目をつけた住宅地開発であること,開発手法が既存の自然環境をできるだけ破壊しないよう配慮されていることが共通点としてあげられる。こうした開発手法が選択された理由は,技術的な限界もあったと考えられるが,比較的高級な住宅地として計画されたこれらの地域では,自然環境が住宅地の付加価値となっていたことが指摘できた。 しかし,これらの開発手法は,時代が下がるに従って見られなくなり,土地全体を平坦に造成する方法が増加する。こうした変化は,北部の山地部へと住宅地が広がる過程において確認された。 この一連の研究によって,長尾山系において展開された住宅地開発と自然環境とのあり方が明らかとなり,大正初期から昭和戦前期にかけての阪神間における郊外住宅地開発の一側面を把握することができた。
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