Research Abstract |
供試材は板厚2.0mmに圧延したTi-49.7at.%Ni-1.38at.%Co形状記憶合金である.供試材より板幅20mm,長さ95mmの平板に粗加工の後,1223K×1.8ks保持後水冷の溶体化の後,723K及び623Kで1.8〜204.8ksの各時間保持後水冷の時効を施した(各々723-T材,623-T材,Tは保持時間とする).疲労き裂伝ぱ試験はASTM規格を参考にし,CCT試験片に加工した723-1.8材(Ms=272K,Mf=255K)及び621-1.8材(Ms=297K,Mf=267K)を用いて応力振幅一定,応力比R=0.1で295K,282Kに調整した大気中で実施した.高分解能SEMにて破面観察したところ,いずれの破面にも明瞭なストライエーションが観察され,これより求めたミクロなき裂伝ぱ速度とき裂進展挙動の直接観察より求めたマクロなき裂伝ぱ速度はほぼ一致した.295Kでのき裂伝ぱ速度dl/dN-応力拡大係数範囲ΔK曲線は,未熱処理材と723-1.8材ではほぼ同等のものが得られたが,623-1.8材については,他の材料に比べ同一ΔKにおけるdl/dNは速くなった.623-1.8材については282Kでも実施したが,同一ΔKにおけるdl/dNは295Kで得られた値よりも明らかに速くなった.試験温度がMs点より低下するにしたがってマルテンサイト量は多くなるので,マルテンサイト量が増加するほど疲労き裂進展抵抗が低くなると考えられる.一般に形状記憶合金の機械的特性は試験温度と熱処理条件(すなわち内部組織)に大きく影響を受けることが知られているので,これらの結果を考察するために,TEMを用いた析出物の分布形態の定量評価,基地の組成の定量分析及び破面近傍の組織観察を実施するとともに,一軸応力下での変形挙動と熱処理条件との関連を調査した.
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