Research Abstract |
(1)人工肝補助システムの性能評価と治療法の検討 平成11年度に作出した部分肝切除付加温虚血肝不全ラットを同じく開発した人工肝補助システムに適用した。50分温虚血モデルに2gの肝細胞を含んだ装置を適用した結果,アンモニアの代謝解毒が生じ,肝細胞を含まないコントロール実験の生存率が84分(4例)であったものが115分(5例)に延長した。つまり,開発した人工肝補助システムによる治療効果が示されたものの,動物側の肝不全血液と人工肝臓装置側の血漿との物質交換が十分に行われておらず,救命することはできなかった。 (2)肝再生誘導による救命効果の検討 (1)で問題となった血漿分離器の膜面積を60%増加させ,さらに,体外循環1時間毎に血漿分離器を新しいものに取り換えることで物質移動性能を飛躍的に向上させた。その結果,70%肝切除ラットモデルを用いた体外循環実験においてコントロールグループでは1時間半から4時間の間で全例死亡したのに対し,人工肝補助システムを適用したものは回復した。人工肝補助システム適用ラットを犠死させて分析したところ,良好な肝重量の増加が見られ,その肝臓の免疫組織学的染色により増殖細胞核抗原(PCNA)を強力に発現しでいることが明らかとなった。つまり,ラットを用いた動物実験の結果ではあるが,本人工肝補助システムは肝機能補助と肝再生誘導という2重の治療効果を発現でき,移植に頼らない肝不全からの救命効果を有していることが示された。
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