Research Abstract |
金属硝酸塩,クエン酸およびエチレングリコールからなる混合溶液から,錯体重合法によりLiMnO_2前駆体を合成した.この前駆体を900℃から1000℃で12時間以上の熱処理後,急冷することにより,均質なLiMnO_2が得られた.ICPおよび原子吸光分析からはLi:Mnの比は,ほぼ1:1であり,化学量論組成を維持していることがわかった.結晶性に優れている程,充放電過程で,Liイオンのインサーション反応を繰り返すと,徐々に,Liイオンの可逆性が損なわれ,安定なスピネル構造へと転移することがサイクリックボルタンメトリーにより明らかとなった.それに伴って,充放電容量も180mAh/gから140〜150mAh/gまで減少したが,その後は安定した充放電挙動を示した.一方,アモルファスに近い低結晶性のLiMnO_2を合成し,その電極反応を調べた結果,結晶性の高いものより,充放電容量はかなり低いものの,サイクル特性は逆に安定していることがわかった.サイクリックボルタンメトリーによるCV曲線からも,スピネル構造への転移が結晶性の高いものより緩慢であることがわかった.そこで,スピネル構造への転移を制御するために,3価の金属イオンをドープし,結晶構造の安定化,および,電気化学的特性について検討した.今回は,この結晶にT1およびCrをドープした.その結果,置換量が3mol%までは均一にドープすることができた.しかしながら,5mol%以上では,不純物相が生成し,均質なLiMnO_2を得ることができなかった.3mol%をドープした試料について,充放電特性を検討した結果,充放電容量はドープしない場合とほぼ同じであったが,4V領域の放電容量が10%ほど向上した.また,サイクル特性も無添加の試料と比較して,安定していることがわかった.特に,Crではその効果が著しく,昨年度合成したInをドープした系よりもその効果は大きいことがわかった.
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