Budget Amount *help |
¥2,200,000 (Direct Cost: ¥2,200,000)
Fiscal Year 2000: ¥200,000 (Direct Cost: ¥200,000)
Fiscal Year 1999: ¥2,000,000 (Direct Cost: ¥2,000,000)
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Research Abstract |
研究の最終年度に当たる今年度は,ナトリウムホウケイ酸塩ガラスについて,融液状態の熱処理がガラスの密度に与える影響を検討した.その結果,ガラス転移温度よりも十分高い融液状態においてもガラスの中距離構造が形成されることを示唆する結果が得られた.その概要を以下に示す. ・ナトリウムホウケイ酸塩ガラスを高純度試薬から通常の溶融法にて作製した.ガラス組成は,25Na_2O-xB_2O_3-(100-x)SiO_2(x=0,15,25,30)とした.これらのガラス試料をガラス転移温度よりも十分に高い温度(700℃〜1000℃)で熱処理した後,除冷(10^<-2>K/sec),水冷(約10^3K/sec)の2種の冷却速度で融液を冷却し再度ガラス化させた.従来のガラス形成の理論に従えば,冷却速度が同じであれば融液の熱処理温度に関わらず同じ構造のガラスが得られるはずである.しかしながら,25Na_2O-15B_2O_3-60SiO_2ガラスにおいて,900℃以上で熱処理し除冷した場合には,他の熱処理温度に比べて0.2%密度が増大した.また,水冷した場合においても,900℃で熱処理したガラスの密度は,他の温度で熱処理した場合に比べて0.6%高い密度を有することが分かった.対応する結晶相平衡状態図を参照することにより,900℃の熱処理において融液中に石英のクラスターが生成する可能性が示唆された.石英の密度はガラスマトリックスのそれよりも高く,このため得られるガラスの密度が増大したのだと考えられる. 以上の結果は,液相点近傍での熱処理により,ガラスでありながらより結晶に近い中距離構造を有するガラスが得られることを示している.ガラス構造の「乱雑さの程度」が融液状態の熱処理により変わりうることを示した初めての実験結果といえる.これまで,ガラス作製時の熱処理はガラス転移温度近傍に限られていたが,より寸法精度の高いガラスを得るための手法の一つとして融液状態での熱処理が有効であると考えられる.
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