Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
3大成人病のひとつである虚血性心疾患は、食生活の欧米化に伴い今後、急速に増加が予想される重要な疾患である。最近、細胞死の新しい概念(アポトーシス)が提唱され、アポトーシスの増加が虚血後の心機能不全に重要な役割を果たしていることが示唆されている。申請者は、これまでに心筋梗塞(虚血)における細胞内シグナル伝達の研究を行い、増殖に重要なMAPキナーゼ(MAPK)が細胞死抑制に働いていることが明らかになった。さらに、このモデルで上流経路を検討したところ、PKCの中でも新しい分子構造を持つPKCζが、MAPK活性化を介して細胞死を抑制していることが明らかになった。PKCζは、ジアシルグリセロールやカルシウムに対する結合部位をもたず、生理的な活性化因子は不明な点が多い。阻害剤を用いた研究から心筋虚血時のPKCζ活性化因子がアラキドン酸代謝産物に密接に関連している因子であることが示唆された。さらに、高速液体クロマトグラフィーのピーク保持時間からこれまでに報告のない新しい分子構造を持つ生理活性脂質であることと思われた。また、心筋虚血時にはPKCζの核移行が観察されるが、このとき、PKCζ結合蛋白質であるPKCζ interaction protein(ZIP/A170)が急速に分解されることを見いだした。この分解はプロテオソーム阻害剤によって完全に抑制され、ZIP/A170の分解がPKCζの核移行およびMAPKの活性化に重要な役割を果たして可能性が示唆された。
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