Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
対象 在胎120日(満期145日)の妊娠羊20頭に対して、母体をマーカインによる硬膜外麻酔、ケタラールによる静脈麻酔にて鎮静した後、開腹、子宮切開して胎仔を露出した。右第二肋間開胸を行なって、上行火動脈、主肺動脈、動脈管を十分に剥離し超音波血流計を装着した。胎仔の腹部を正中切開して右腎動脈にも同様に超音波血流計を装着した。この胎仔の臍帯をテープにて、絞扼なし、絞扼50%(周径)の条件下に、上記の血流を測定した。この絞扼は臨床でもよく経験される臍帯倦絡に相当し、胎児仮死の重要な原因の一つであり、この病態を解明することは非常に有用である。結果 絞扼なし/絞扼50% 上行大動脈52±12/48±23ml/min、主肺動脈56±23/36±21ml/min、動脈管57±21/35±14ml/min、腎動脈23±12/18±21ml/min。考察 以上から、臍帯が絞扼される胎児仮死状態においては、重要臓器である脳血流(今回の検討では上行大動脈血流)、腎血流は低心拍出量下でも維持され、その他の肺動脈から動脈管を経由して供給される血流に関しては低下していることがわかった。このことは、胎児においても生理的に血流再分布現象が行なわれていることを示している。血流再分布現象は強力な血管拡張物質である一酸化窒素が関与していると思われるので、合成阻害剤であるNNLA(N-omega-nitro-L-Arginine)投与によってその役割を明らかにできるはずであるが、、今回は検討できなかったので来年度の課題としたい。