Research Abstract |
現在,小口径の動脈血行再建術に対して用いる代用血管として,自家伏在静脈や自家動脈が第1選択として使用されている.これは自家血管より優れ,かつ操作性の良い人工血管が未だ開発されていないからである.しかし高齢化社会となり,動脈硬化性疾患の増加やさらには再手術症例の増加とともに,自家血管の使用が不可能な症例も少なからず存在し,今や小口径の代用血管の開発は緊急事といえる.今回われわれは,ヒト尿管を用いて,小口径の代用血管を作製し,動物への移植を試みた. 対象と方法:代用血管の作製は,死後12時間以内のヒト尿管を患者家族の承諾を得て採取し,(II群)Polyepoxy compound(5%,20℃,48hr)にて処理、(III群)冠動脈バイパス術あるいは伏在静脈ストリッピング術時に採取した伏在静脈をPolyepoxy compound(5%,20℃,48hr)にて処理した後、各々をethanol溶液(40%)内に保存した2種類の内径3〜4mmの代用血管を作製した.これら作製したductをgraft長2cmの代用血管として家兎(3〜3.5kg)の頸動脈(径2mm)に移植した.これらの移植された代用血管を1カ月後,3カ月後,6カ月後に摘出し検討した. 結果と考察:ヒト尿管は伏在静脈と対比して,分枝が無く,その処理は全く不要で,中枢や末梢側での口径差の無い均一なグラフトとなる.また,ヒト組織であるため,免疫学的に寛容である.ヒト尿管を用いて作製した代用血管は良好な開存性と良好な機能を兼ね備え,さらに摘出表摘出標本において,グラフト内面を覆う内皮様細胞の形成が認められた.さらにPolyepoxy compoundにて処理したgraft長5cmの代用血管についても家兎への移植実験を行ったが,良好な開存が認められた.以上から,ヒト尿管をポリエポキシ化合物(polyepoxy compound)で処理したグラフトは,自家血管にも劣らない,良好な代用血管となるものと期待された.
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