Research Project
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
肝移植において問題となる、臓器保存に伴うグラフト障害を軽減すべく、阻血耐容性の向上を目的としheat shock proteinの肝細胞への遺伝子導入を試みた。昨年度は第一段階としてex vivoで最も効率の良い遺伝子導入の方法について、まずLacZを用いて検討した。対象はSDラット。導入手段として三種の脂質からなるアニオニックHVJリポソームを用いた。導入方法はグラフト肝潅流後にHVJリポソーム法を用い経門脈注入で、温(室温)潅流群と冷(2℃)潅流群の2群を設定した。潅流液はヘパリン加ラクトリンゲル液とし注入後10分間静置し標本を採取、LacZの発現の差異について検討を行なった。結果として有意な差でないが温潅流での導入の方が効率が良い傾向が見られた。この結果に基づきHSP70の導入を行なった。RTPCRによる検討は不十分であるが免疫染色による検討ではHSPの発現は認められるものの充分とはいえなかった。今年度は前年度の結果をふまえRTPCRによる検討を加えたが有意な差を認めず静置時間を20分に延長し再検討を行なったが同じ結果であった。そこで導入手段をより導入効率の良い5種の脂質からなるAVE HNJリポソームへと変更し昨年度と同じ検討を行なった。静置時間は10分。導入効率は温潅流において有意に良好であった。以上の結果をふまえ温潅流による導入、6時間の冷保存にて移植実験を行ったがコントロール群との差を認めなかった。原因として温潅流導入とその後の10分間の室温静置による温阻血障害がHSP導入の効果を凌駕していると考えられた。そこで計画を変更し、導入効率は劣るが冷潅流導入、静置(冷)時間20分、保存時間3時間とした。移植実験に先立ちグラフト肝の形態学的検討を行なったところ良好な効果を確認した。ついで上記条件で移植実験を行った。HSP導入群がコントロール群に比し生存率の改善傾向を認めた。